ごきげんさんに暮らすまち、尼ノ國

尼ノ⺠の⼀⽇

 今回は、一度は離れた尼崎に戻り、キラリと個性が光るこだわりのお店づくりをしている人たちに会いに行きます。一緒にお店を巡ってくれるのは、園田地区在住、現在西宮の大学で社会問題や地域について学んでいる中西菜瑠(なる)さん。複数の飲食店を掛け持ちでアルバイトするほど食べることが大好きです。そろそろ卒業後の進路も気になり始める菜瑠さん、起業にも興味があるようです。

毎日食べたい、やさしいパン。ノウムベーカリー


 2016年2月にオープンした、佐野貴人さんと智子さんご夫妻が営むパン店です。2014年、篠山での田舎暮らしに憧れて、当時住んでいた尼崎から移住。今回、店を構えるにあたり、再び住み慣れた上ノ島町に戻ってきました。店名は篠山の野菜を美味しく育てる「濃霧」に由来。天然漆喰や無垢材など自然素材を用いた店内は、棚なども含めほとんどが貴人さんの手によるものです。パンづくりの担当は智子さん。自家製天然酵母、熊本県産小麦を使い、主食となるシンプルなものから、季節の野菜などを使った調理パンまで種類も豊富です。毎日食べるとお通じがよくなるというおすすめの玄米食パンは、ドリンクとのセットで店内飲食も可能。「外はカリっとして中はモチモチ、でとってもおいしい」と思わず笑顔が弾ける菜瑠さん。


写真、おすすめの玄米食パンとドリンクのセット
自家製マーマレード、四葉バターと一緒に。

 以前はハード系のパンを好んでつくっていた智子さんですが、近所のお年寄りや子どもたちからのリクエストでクリームパンやメロンパンもつくるようになりました。卵を使っていないため、アレルギーを持つ子どもたちにも喜ばれています。「これからもお客さんの声に応えながら、ゆっくり店を育てていきたい」と話す佐野さんご夫妻。まちのパン店として、地元の人たちの日常に溶け込み始めています。

店主の「心地よさ」を形にした、小さな白いカフェTeToTe。


 JR立花駅のすぐ近く、真っ白な壁に大きく切り抜かれた窓が目印です。東京の国税庁で勤めていた経歴をもつ店主の倉田裕充さん。働き詰めの毎日の中で、「お父さんの笑顔が見たい」という家族の言葉に背中を押され、2014年、41歳で心機一転、ご実家がある尼崎に戻り、夢だったカフェを始めました。長く続けていくために、「無理はせず、自分が楽しい、心地いいと思える店にしよう」と決めました。心地よさの追求は、白と木を基調に細部まで丁寧にデザインされた店内からも伺えます。開店に向けて働きながらカフェの学校に通った倉田さん、フードやドリンクにも妥協はありません。リピーター続出の自家製アップルパイは自身が好きだったお店のレシピを直談判で伝授してもらったというこだわりの一品。


人気の自家製アップルパイ
温かいアップルパイにたっぷりのバニラアイス。見た目のインパクトも大。

 2016年からは倉田さんがSNSなどで見つけて好きになったアーティストの展示会も始めました。2017年の目標は毎月違うアーティストの展示会を開くことだとか。「何度も前を通っていたのに知らなかった」という菜瑠さん。「将来カフェを開きたいと考えている姉と一緒に来たい」と、倉田さんの穏やかな人柄とこだわりの店づくりにすっかり魅了された様子です。

作り手の想いを代弁するお料理を。穀菜食堂なばな


写真、出迎えてくれる穀菜食堂なばな店主の金岩さん
イメージカラーの黄色いのれんが目印です

 JR尼崎駅の南側、下町情緒が残る住宅街にあるお店に入ると、着物に前掛け姿が似合う金岩日佐美さんと看板犬のサブロー君が迎えてくれます。


 2010年2月にオープンした穀菜食堂なばな。就職先の東京から尼崎に戻り、本格的にマクロビオティックを学んだ日佐美さんが提供するのは、動物性たんぱく質を使わない純菜食。マクロビオティックの考え方を応用しながら、できるだけ地元の食材を使い、日本人が親しんできた伝統食をうまくアレンジしたメニューがそろいます。毎朝精米するという無農薬米や国産大豆でつくる自家製みそも提供します。心を込めて丁寧につくられたものを前にすると、「いつもよりゆっくりと味わって食べたいと思った」という菜瑠さん、自然と背筋も伸びます。


写真、穀菜食堂なばなのおからドーナツ
杭瀬のみやじま豆腐店のおからで作るおからドーナツ

 最近は地方の生産者と都会に暮らす人をつなぎ、作り手の想いを伝えたいとワークショップやイベントにも力を注ぎます。また、2015年6月からは地域食堂「まあるい食卓」を地域の人達とスタート。一緒にご飯をつくって食べる喜びや楽しみを感じられる場です。「知ることで意識が変わり、選択できるようになる」と言う日佐美さん。まだまだ食を通じて伝えたいことがたくさんあるようです。

取材を終えて

 アレルギーの子どもたちも食べられる卵を使わないパン、心地よさを追求し続けるカフェ、自分が口にするものは自分の意志で選ぼうと思わせてくれる食堂。いずれのお店も作り手からのメッセージがダイレクトに伝わります。これから自分がしたいことをどんな風に表現していくのか、菜瑠さんにとってもいい刺激を受けられた1日になったようです。




取材・文 尼ノ物書キ組

保坂優子

ページトップヘ