からだに美味しいものから広がる「地域」とつながる暮らし

  • LIFE

店舗前に立つ今井真紀子さん
店舗前に立つ今井真紀子さん

 「本当に住みやすい街大賞2018in関西」で堂々の1位を獲得したこともあるJR尼崎駅かいわいは、尼崎でも屈指の転入者に人気のエリアです。そんな駅前の高層タワーマンションから、北東へ徒歩7~8分の次屋に住む今井真紀子さん。少し北側に行くと、コストコやイオンやロピアといった大型商業施設が集積する次屋ですが、今井さん宅の周辺はまるでエアポケットのような静けさがあります。そんな場所にある自宅で、今井さんは自然食品のお店「リアンラソ」を営んでいます。

ドーナツにつられて購入を決めたマイホーム


JR尼崎駅近くの交差点付近に、どっしりとした存在感を放つ
建物は、かつて今井商店があり、今井さん夫婦が最初に暮らしたマンション。
JR尼崎駅近くの交差点付近に、どっしりとした存在感を放つ建物は、かつて今井商店があり、今井さん夫婦が最初に暮らしたマンション。

 夫の博之さんは、生まれも育ちも尼崎市潮江。博之さんの母親は今井商店という自然食品店を営み、近くの企業に勤める外国人や健康相談に来る人などが集い賑わっていましたが、1995年の阪神淡路大震災で被災し、閉じることになったそう。博之さんは、「いつか母親の店を復活させたい」という思いを持ちながら企業に就職しました。そして、いつしかその夢を妻の真紀子さんに託します。


広々とした一方通行道路に面する今井さん宅。明るいレンガ色の外装と、屋上があるため外観からは4階建てに見える作りで、遠くからもよく目立つ
広々とした一方通行道路に面する今井さん宅。明るいレンガ色の外装と、屋上があるため外観からは4階建てに見える作りで、遠くからもよく目立つ

 今井さん夫婦は、結婚後はかつて母親のお店があったマンションに暮らし始めます。子どもが生まれて間も無くの頃、住宅展示場のチラシを見て、覗きに行きました。

 「『ドーナツプレゼント』って書いてあったので行っただけ」のはずが、ハウスメーカーのアンケートに「店舗付き、屋上バルコニー付き、駐車場付きの家を建てたい」と記入したところ、翌日、ハウスメーカーから電話がかかります。「今井さんの希望が全部叶う土地が次屋にありますよ」。すぐに場所を案内してもらい「全部叶うならここで!」と、即決した真紀子さん。夫の博之さんは「大根買うみたいに簡単に決めるなぁ…」と、呟いたとか。そんな風にあっさりと新しい住まいは決まったのでした。

自然食品のお店「リアンラソ」オープン


ミニキッチンを併設した店内には、こだわりの自然食品が所狭しと並んでいる。
ミニキッチンを併設した店内には、こだわりの自然食品が所狭しと並んでいる。

 自宅を新築後、2010年から念願の自然食品のお店「リアンラソ」を、真紀子さんは始めます。「自然食品って、あまり一般の人には馴染みがないし、自宅兼の小さな店舗だから、お客さんにも全然認知が広がらない。個人客よりも、飲食店に食材を提案していくということが多くなりました」

 毎年、冬から春先のシーズンには手づくり味噌講座を自宅で開催。参加者は年間200人ほどにものぼるそうです。開催時には、自宅前に自転車がたくさん停まるので、はじめは近所の人から「怪しい活動でもやっているの」と疑われたことも。そんなうわさが広がっていることを同じ自治会の人から聞いて、きちんと説明して誤解を解いてもらいました。「当初から自治会に入り、役職も担っていました。その一番のメリットは、住宅街のお店なのに近所の人に受け入れてもらって全くクレームが来ないことですね」

子どもの幼稚園からつながったママ友たち


西を望むと六甲山系も見える屋上バルコニー。お天気の良い日はお布団や洗濯物の干場となる。ダンス部の打ち上げBBQ会場となったことも数知れず。洗濯物の干場となる。ダンス部の打ち上げBBQ会場となったことも数知れず。
西を望むと六甲山系も見える屋上バルコニー。お天気の良い日はお布団や洗濯物の干場となる。ダンス部の打ち上げBBQ会場となったことも数知れず。

 現在は高校3年生と中学3年生になった二人の娘がいる真紀子さん。二人の娘さんは自宅近くで、ユニークな教育方針を掲げる「はまようちえん」に通いました。園では、保護者の参加機会が多く、母親同士の出会いも多かったとか。「園での出会いをきっかけにダンス部を結成し、今も幼稚園行事に出演したりしているんです」というから驚きです。「子どもたちは校区が違ってバラバラになったけど、逆に子ども繋がりでなくなったところが長く付き合いが続いている秘訣かも」と教えてくれました。

からだに優しい食材の提供から、特製お弁当まで。


リアンラソがお勧めする天然調味料が並んだ棚。リアンラソの料理はすべてこの調味料を使って作られている。この調味料を使って作られている。
リアンラソがお勧めする天然調味料が並んだ棚。リアンラソの料理はすべてこの調味料を使って作られている。

 2年前からお店にキッチンを増設し、店内ランチやお弁当の販売も始めました。次屋から少し南にある杭瀬の市場で、新鮮なお魚や野菜を仕入れ、週3日のお弁当販売日には朝3時半から仕込みを始めるという、超朝型の生活に。元気の源は何なのでしょうか?「次に何しようかな、と計画に向けて、あれこれ思いを膨らますことかな?」と、あくまで動くことが次のエネルギーになるという真紀子さん。


ある日のお弁当。とにかく品数が多いのが次屋弁当の特徴。おかずは7~8品入って750円(税込み)
ある日のお弁当。とにかく品数が多いのが次屋弁当の特徴。おかずは7~8品入って750円(税込み)

 「ウチの店はなかなか入りにくい感じなので、人づての紹介で来る人が多いです。いわば相談薬局みたいな感じかも。子どものアレルギー相談に来られて、どんな食べ物がいいか、1~2時間おしゃべりしていかれる方もいますね」

 大阪出身の真紀子さんですが、尼崎の街のことをどう思っているか、聞いてみました。
 「住む前までは良いイメージはなかったけど、まさに『住めば都』。利便性もいいし、転入者が多いので、小さな異文化が交じり合っている感じがします。時々、お店で扱っている調味料の値段が高いと、厳しい言い方をする尼のおばちゃんが来ることも。でも、そんなお客さんとのやり取りも含め、下町フレンドリーなところがこの街の良さだな、と」

 カラカラとよく笑う明るい真紀子さんとおしゃべりしていると、誰もが自然に元気をもらえそうです。さらに、からだに優しいリアンラソ特製「次屋弁当」を食べると、それをしみじみと体の中からも実感できることでしょう。





リアンラソ外観

店外ドアに貼られたチラシ