ごきげんさんに暮らすまち、尼ノ國

突撃!尼ノ役所

 時はさかのぼること文禄年間(1592~1596)に貴布禰神社の宮司を拝命し、慶長5(1600)年に没するまでその務めを果たした江田家の初代・九兵衛尉政一。そしてその跡を継ぎし2代目・左兵衛尉政元は、慶安元年(1648)に没するまで宮司として貴布禰神社の護持運営に努めたと『尼崎志』には遺されている。
 現在、西本町に鎮座する貴布禰神社。今でも長洲にある貴布禰神社が元宮とされているが、所縁の深い大覚寺の南進とともに分祀(御神体を分けて新しく祀りはじめること)され、長きにわたり後の尼崎城西三の丸に当たる場所に鎮座していた。ところが、初代藩主・戸田氏鉄公が尼崎城を築城する際、城域を広げるため移転を余儀なくされ、新城下町の西屋敷内(現西桜木町)に元和3(1617)年遷り、その後、正徳5(1715)年に現在地へと再び遷った。

新居と思いこんで夫婦で見にいく。

 「えっ、尼崎城が再建されるって? どこに? 元々あった場所ではなく、西三の丸やってぇ~。ほんまに、ほんま?」
 そう、この度尼崎城天守が再建された西三の丸あたりは、1617年まで貴布禰神社があった場所。しかも、その時代に江田家が宮司を務めていたことが公式文書に残っているという奇跡。「私は新しくできる尼崎城に住む権利のある、元住人の末裔だ!」と方々で語り始めた。そして、言い続ける事、2年近く。このたび、皆さんにとっての新尼崎城、私たちにとっては新居の内覧会に妻とともに出向いた、というわけだ。


「ただいま」という気持ちで新築の城門をくぐる。

 高く積み上げられた本格的な石垣を見上げながら進み入口を入ると右手には、この度の尼崎城再建のために寄附をされた方々のお名前が記された銘板がある。実は元住人の末裔として、私も少しだけ寄附をさせていただいたので、必死に名前をチェックする。「あった」。その銘板に記載されている方々だけで約1億8千万円の寄付とのこと。


金額による文字の大きさの違いを見比べて楽しむ江田さん。

 1階は他にも「尼崎まちあるきゾーン」として、尼崎の歴史や観光スポットを床に映る映像で楽しむことができる部屋がある。こちらは無料で体験ができるが、さまざまな映像の中で、「尼崎空中さんぽ」と「自分の家を探してみよう」がお勧めとのこと。もちろん、私も自分の家をしっかり探し出した。


足元に航空写真が広がりまるで空から尼崎を一望しているよう。

城下を見下ろす天守5階へ

 そしていよいよ有料ゾーンへ。内覧会案内人の野呂弥生さん(本職は尼崎市職員)とともに、まずはエレベーターで5階まで上がり、「わがまち展望ゾーン」に降りるとヒノキの香りがお出迎え。この香りを楽しむには、開宴後早めの登城がお勧めだ。ここでは現在の天守が建つ場所から見た当時の様子をタブレットに再現している。このタブレットを両手で持って回してみると、今の天守閣から当時の天守閣が見えるという何とも不思議な体験もできる。窓から見る今の様子と、タブレットで見る城下町の様子。全く面影が残っていないことも〝あまらしさ〟なのかな、と歩みを進めた。


かつて天守があったのは南東。天守から元天守の場所を眺める。

 4階は「ギャラリーゾーン」となっていて、開宴当時は尼崎が生んだ城郭画家・荻原一青さんの全国各地の城郭を描いた手ぬぐいの展示が行われているそうだ。都市化とともに城跡が失われていった尼崎城に危機感を抱いた荻原一青さん。ちなみに、このギャラリーゾーン、私はお城にまつわる演題しばりで落語会などを開いてもおもしろいかな、なんて考えた。

ここでホームパーティーしたい。

 いきなりキンキラ金のふすまが目に飛び込んでくるのは3階の「なりきり体験ゾーン」。この派手さ、地味な私の趣味ではないなあ、と思っていたら、野呂さんが「尼崎城の本丸には、牡丹之間と菊之間というお部屋があり、そこの襖や障子が金箔で彩られていて『金之間』と呼ばれていたんですよ」と教えてくれた。史実を忠実に再現、んっ、ここは本丸ではなく天守だから忠実に…ではないが、それだけ尼崎城がすごいお城だったという史実をギュッと詰め込んだ天守と理解する。


普段の着物にもよくあう兜をかぶってお殿様気分を味わう。

 ここでは、「なりきり体験」ができる。しかも子どもだけでなく、大人も。私も早速、野呂さんに兜をかぶらせてもらって、当時の食事を再現した御膳を前に記念写真をパチリ! ほかにも甲冑、旗本、お姫様、忍者などすべて無料で体験が可能なのだ。(なりきり体験の移動は3階のみ)。妻もお姫様になりきりたかったようだが、周りの空気を読んで断念。「少しくらい体験料をもらえるだけの内容ですよ」とアドバイス差し上げたが、野呂さんは「いえ、無料です」ときっぱり。他にも、子どもが楽しめる絵本やゲームもあり、このフロアだけで入場料の元は取れるほどの内容だ。我が家となれば、コスプレパーティーで大盛り上がり間違いなし。早く我が家にならないかなぁ。

楽しく学べてお値段以上。

 「正直、想像していたより、すごいなあ~」と感じながら2階の「尼崎城ゾーン」へ進むと、「まずはこちらへ」と大型スクリーン前に案内された。ここは「尼崎城VRシアター」で、尼崎の生んだ人間国宝・桂米朝さんのご子息で落語家の桂米團治さんの語りで近松門左衛門が、往時の尼崎城や城下の成り立ちを紹介してくれる。今では想像もつかないが、酒蔵があり、醤油も作られていて、魚市場もあり、これって本当に尼崎?と思いつつ、わかりやすく学ぶことができるのがうれしい。


「こんなシアターうちにも欲しいなあ」と映像にのめり込むお二人。

 他にも、パネル展示の「尼崎 お殿さま列伝」では、藩主を務めた戸田家・青山家・松平家のことを知り、家紋をスタンプできる。ちなみに貴布禰神社の社紋は青山家からの家紋と同じ、とプチ自慢。このフロアには、侍道場として剣術体験(かなり難しい)や、鉄砲体験(さらに難しい)、お城パズル(妻が楽しそう)などが楽しめ、子どもはもちろん、大人でも十分に堪能できる内容となっている。


鉄砲体験に没頭する江田さん
思いがけずゲームに没頭してしまった江田さん

 最後に原寸大の鯱の間で記念写真をパチリ!「手を触れないでください」と書いてあるが、思わず鯱に触れたくなるほどの迫力と近さで、これは来場者の動揺を誘う作戦か。


写真、原寸大の鯱の前で撮影する江田さん
ここで撮影すれば気分はすっかり城主に。

 ということで、我が家の内覧会は以上で終了。野呂さんから早期契約割引まで提示されたが、キッチンやリビングのことを妻と相談しなければならず、その場で結論が出ずとうとう開宴の時を迎えてしまうことに…。あの時、妻がお姫様になりきることを強く勧めておれば今頃我が家だったかも…、って妄想だらけの尼崎城レポートを終わることにしよう。ミドリ電化と会社は違うが、「お値段(入館料)以上!」な尼崎城、お勧めです。




取材・文 尼ノ物書キ組

江田政亮

ページトップヘ