ごきげんさんに暮らすまち、尼ノ國

尼ノ民たち

金谷静香さん(28)/株式会社「マイチケット」勤務

新しい旅のカタチとして注目されているスタディツアー


 取材当日、「こんにちは~」と、笑顔で出迎えてくれた金谷静香さん。ふわふわっとした優しい雰囲気が素敵な彼女は、これまでの訪問国が16ヶ国以上というアクティブな一面を持つ女性でもあります。

 「スタディツアー」などを多く手掛ける尼崎の旅行会社「マイチケット」に勤務する金谷さん。「スタディツアー」とは、一般的な観光旅行とは違い、現地の人たちの実際の生活を間近で見たり触れたりすることを目的にしているツアーです。その出会いを通して、世界観が大きく変わる人が多いそう。主にNGOや大学などが企画し、旅行会社に委託。「マイチケット」では、タンザニア、インド、タイ、マレーシア、フィリピンなどさまざまな国のツアーを取り扱っています。

高校の授業が海外へ興味を持つきっかけに


 金谷さんが海外、とくにアジアに興味を持つようになったきっかけは、高校生の時。新聞の気になる記事をまとめるという授業があり、そこで取り上げたのがアジアの貧困問題に取り組むNGOの記事でした。「世界にはこういう現実があり、こういう仕事があるんだ」ということに、驚き、強く衝撃を受けたといいます。

 これをきっかけに、「将来、NGO職員として働きたい」という思いがグッと強くなった金谷さんは、スタディツアーに参加することに。「その当時、NGO職員になりたいと家族に言っても、アジアに1度も行ったことがなく。家族を納得させるには、まず私が行って、大丈夫だったという口実が必要だと思ったんです」。そして、訪れたのがタイ。「1週間ホームステイしたのは、スラム街の入り口にある貧困家庭。生活は予想以上に大変でしたが、それ以上に、こういう問題に関わりたいと気持ちの方が大きくて。しかも、日本にいる時より、自分の思ったことをさらけ出すことができたので、気持ちはすごくラクだったんです」。

バングラデシュで転機が訪れる


 大学に入学してからは、国際協力やNGO論について学びながら、スタディツアーにも積極的に参加する日々。けれど、ネパール、インドと訪問するなかで、「現地で何ができるのかを、見つけることができなかった」といいます。そんななか訪れたのが、バングラデシュ。できることが全く見つからず、ひたすら焦る金谷さんに現地でアドバイスをくれた人物がいました。「みんなが、現地で直接問題を解決するわけじゃない。その人ができることを選んで、一生懸命進めばいいんだよ」。

 この言葉を聞き、「現地で問題に直接関わるのではなく、それを考える場所を日本でつくりたい。色んなスタディツアーに参加してきた私だからこそ、できることがあるはずだ」と思い、急に気持ちがラクになったといいます。

 そして、大学卒業後、迷うことなくスタディツアーを多く取り扱う今の会社「マイチケット」に就職することを決めます。

迷っている人に「大丈夫だよ」と後押しをしたい


 スタディツアーは、現地で働くNGOスタッフが引率してくれ、通訳もしてくれるので、英語や現地の言葉が話せなくても困る事はありません。幅広い年齢層の参加者のなかで、1番多いのはやはり大学生です。年に2回、ツアーを企画するさまざまなNGO団体が集まる会社主催の「NGOスタディツアー合同説明会」には、多くの大学生が集まってきます。

「せっかく説明会に来たのにドキドキして、NGOのブースに行けない学生さんも、けっこういるんですよ。そんな時は『どういう国に行きたいのかな』『どういうことを知りたいのかな』をしっかりと聞いて、それに合ったNGOを紹介します。うまく両者を引き合わせられたら、すごくうれしい。何よりも、この時間がたまらなく好きなんです」と、嬉しそうに話す金谷さん。

尼崎と世界をつなげるきっかけに


 さらに、「マイチケット」ではツアーの手配だけでなく、イベントも開催。「非日常的な旅行と普段の暮らしをつなげたり、自分の国のことを知ることができるイベントを企画しています。海外へ行くと急に聞かれることが多くなるのが、『日本』という国のこと。その時に、ちゃんと自分の意見を言えた方がいいと思うんです」。最近では、沖縄の高江ヘリパッド建設のことを取り上げたドキュメンタリー映画「標的の村」の上映会を会社で開催。尼崎にいながら世界とつながるきっかけが、ここにはあります。

自分らしく生きることを大切に


 淡路島出身の金谷さんが、尼崎に住むようになったのは、6年前。最初、尼崎に住むことを知人に伝えた時は、かなり心配されたのだそう。「私自身、住みにくいと思ったことは1度もないです。近くの武庫川沿いをのんびり散歩するのがお気に入りですね」。

 2016年に、ネパール人の男性と結婚。結婚後も、お互いの時間を大切にし、休日でも一緒に過ごすことは少ないといいます。「お互い好きなことをしています。ネパールではこう、日本ではこう、ということはしたくなくて。せっかく国際結婚したのだから、お互いを尊重したい。新たにつくりだせる文化があると思う」。

 たまに尼崎の商店街を、2人で買い物をしていると、商店街の人によく声をかけられるという旦那様。「いつの間にか、たくさん友達ができているようで。『だれ?』って思う人と、あいさつしています。でも、この街の自由で誰でもウエルカムな空気は、とても居心地がよいですね」。

 自分の道を、自分らしく歩んでいる金谷さん。彼女には、そんな懐の深さを感じさせる尼崎という街がぴったりなのかもしれません。








(プロフィール)
かなや・しずか 
兵庫県淡路島出身。高校生の時、貧困問題に関心を持ち、タイでのスタディツアーに初めて参加する。大学卒業後は、スタディツアーを多く扱う株式会社「マイチケット」に入社。以来、NGOや大学のスタディツアー、海外研修を担当。休日は、意外にもインドア派。映画鑑賞、読書、YouTubeで動画を見るのが大好きなんだそう。


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