ごきげんさんに暮らすまち、尼ノ國

尼ノ民たち

藺牟田美穂子さん(45)/ヨガ講師

居心地のよさあふれるヨガ教室


 毎週金曜日、藺牟田さんが主宰する「ママヨガ」の日には、たくさんの赤ちゃん連れのお母さんたちが来ます。リピーターの人も、初めての人も、赤ちゃんも、みんなニコニコ楽しそう。藺牟田さんのヨガ教室は、ただヨガをするだけではありません。それは、始まってすぐに分かります。

 レッスンが始まると藺牟田さんは、お母さんたちに優しく語り掛けます。「赤ちゃんが泣いても、気にしないでいいですよ。リラックスしてくださいね」。そしてお母さんたちの体調などを聞きながら、参加者同士の交流がゆるやかに始まっていきます。自己紹介、赤ちゃんの月齢、住んでいる所、子育ての悩み…。この日は「産後うつ」についても話しました。藺牟田さんは、一人一人の話を丁寧に聞きながら、自分の経験と照らし合わせて分かりやすく話していきます。お母さんたちも、悩みをみんなで共有するなかで、さらに優しい顔つきになっていったのが印象的でした。

孤独な子育てを経験


 「母が病気だったので、ヨガで母に何かできたらと思って」。大人メインのヨガから、マタニティーヨガ、キッズヨガ、ベビーヨガセラピー、筋調整ヨガなど、さまざまな資格をとった努力家。

 お母様が亡くなった後、妊娠が分かり、初めての出産。けれど藺牟田さんは「子育ては不安なことばかりで、なんて大変だろう」と感じたといいます。出産時には両親がいなかったことや、妊娠時期に引っ越しをしたので、周りに知り合いが全くいない状態。子育てについて相談できる人が誰もいないなか、「市から新生児訪問の保育士さんが家に来てくれた時は、すごくうれしかった」と藺牟田さん。

 睡眠不足や、軽い産後うつも経験。そんななか「子育て中でも、子どもを連れてヨガがしたい」と思い、教室を探したものの尼崎では見つからず。「それなら自分がやろう」と思いたち、1人で動き始めます。チラシをつくって配る。ヨガができそうな場所を探す。そうするなかで、少しずつ口コミで広がり、尼崎の幼稚園や子育て支援施設でレッスンを開催するなど場が広がってきました。

託児付きヨガ教室の可能性


 「最初は、赤ちゃんを連れてくることができるヨガクラスをスタート。でも次第に、年配の方に赤ちゃんを見てもらえる託児付きのヨガ教室を始めたくなったんです」と話す藺牟田さん。「核家族が多い今、子どもさんやお孫さんと離れて、1人で住んでいる年配の方。両親と離れて、子育てをしているお母さん。両者が隣同士で、大変な思いを抱えて暮らしているような時代だと思います。お互いが触れあうことを求めているのに、そういう場所がないのではと。それならば、ヨガを通じて『つながれる場所』をつくりたいと考えました」。

 そして、尼崎市東難波町の「尼崎シルバー人材センター」での託児付きヨガ教室がスタート。定員が満席になるほどの人気講座となります。「最初は緊張していた赤ちゃんもすぐに慣れて、おばあちゃんの腕の中でスヤスヤ寝ちゃうんです。お母さんたちは、そのなかですごくリラックスした時間を過ごしている。何より、赤ちゃんを抱っこするおばあちゃんの幸せそうな顔を見たら、頼れる場所がちゃんとあって、『1人で頑張らなくても大丈夫だよ』と、私自身が励まされている気持ちになりました。現在、託児付きヨガは開催できていないので、また再開し継続していくことが、今一番の目標です」。

ヨガで「人の輪」をつないでいきたい


 現在、開催している園田のヨガスタジオや立花地区会館以外に、公民館や「尼崎の森deヨガ」などの尼崎のイベントでも活動の場を広げている藺牟田さん。今後はどのような方向に進んでいきたいのでしょうか。

 「ヨガは『つなぐ』という意味があるんです。幅広い世代が参加できるようなヨガをこれからも続けていきたいです。少子高齢化が進む今だからこそ、家にこもりがちな年配の方のシニアヨガクラスを開催。その後に、ママヨガクラスをすることで、年配の方に赤ちゃんの見守りをお願いする。人から必要とされていることで、生きる力が湧いてくると思うんです。公民館などを、三世代が自然に交流できる場として使えたら、すてきですよね」。

 ヨガを通して、世代の壁をとりはらいながらつながっていく「人の輪」。お互いが「おたがいさま」の精神で助けあいながら暮らすことの大切さを、藺牟田さんのヨガは、私たちに伝えてくれています。






(プロフィール)
いむた・みほこ
「つながるヨガ・ヨガビンディ」主宰。ヨガ講師。「ママ1人では子育てはできない。子育ては、みんなですればいい」という考えのもと、ヨガを通して、色んな世代が集まれる場所づくりをしている。西宮の入浴施設などでヨガ教室を開いたりと、ユニークな企画も。「尼崎ならではの笑いを取り入れた『アマヨガ』も作ってみたい」。新たな挑戦が、これからも続く。


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