ごきげんさんに暮らすまち、尼ノ國

尼ノ学校

 自然が少ないといわれる尼崎で、環境改善に取り組む中学生がいます。西長洲町にある成良(せいりょう)中学校の部活動「あまっ子 Farm(ネイチャークラブ)」では、12年前から尼崎の海や川、運河をきれいにする活動などを続けてきました。その活動が評価され、地球温暖化防止活動に取り組む団体などの全国大会「低炭素杯2019」でジュニア・キッズ部門最優秀賞の環境大臣賞金賞を受賞。そしてこの度、2019年6月28、29日に大阪市で開催された「G20」(主要各国の首脳が集まる国際会議)で、中学生日本代表として各国の首脳の夫人らの前で活動発表を行いました。そんな、世界が注目する彼らの取り組みについてご紹介します。

自然に触れて命のつながりを学ぶ

 「命のつながりをつくり育む環境教育」をテーマに活動をしている成良中学校の「あまっ子 Farm(ネイチャークラブ)」。現在は1年生から3年生まで24人が所属し、平日の放課後は校内で「あまっ子 Farm」として活動、さらに学校から地域に飛び出し「ネイチャークラブ」として自然環境改善の活動を行っています。


 成良中学校の校舎は「環境学習ができる施設」をコンセプトに建てられていて、屋上は全て畑になっています。テニスコート2面分の広さがある屋上菜園では、全校生徒でトマトやジャガイモ、ニンジン、玉ねぎなどを栽培。あまっ子 Farmの部員は、それら作物の日々の管理をしています。

 屋上菜園でたくさんの作物が採れたときは、近くにある介護施設に提供し、カフェで使用されることも。昨年は里芋が大量にできたときは老人ホームの方々に収穫を手伝ってもらったり、逆にこちらからも老人ホームへ畑の整備を手伝いに行ったりと、地域との交流も行っています。


 さらにこの屋上菜園では、尼崎運河で繁殖する藻や貝類を採取し、堆肥化して利用しているのだとか。こちらはネイチャークラブの活動として、徳島大学や尼海(あまうみ)の会と連携しながら取り組んでいます。そのままにしておけばヘドロのもとになってしまう海の栄養が、校内の畑の肥料として循環しています。


尼崎運河での活動の様子
尼崎運河の水質浄化施設でも活動をしています

尼崎運河での活動の様子
パドルボートを使って尼崎運河のゴミ拾いもしています

 他にも、徳島県の上勝町では都会と田舎のお互いの地域課題を解決するために、荒れてしまった里山を守る活動や、棚田で米や野菜の栽培をしているのだとか。市内に留まらず、積極的に県外に出て深く自然と関わっています。


徳島県上勝町の棚田での活動の様子
棚田を3面借り受け、米や野菜を作っています

 そもそも、ネイチャークラブの発足のきっかけは何だったのでしょうか。

 「2005年に城内中と育英中が統合され成良中になるときに、環境学習に力を入れはじめました。新しくできた屋上庭園に土を入れたり、生ゴミで堆肥を作ったりする活動を続ける中で、興味を持った生徒が放課後も手伝ってくれるようになり、2007年にネイチャークラブを立ち上げました。参加できるときに来て手伝っていく、ゆるやかな組織としてスタートしたんです」とネイチャークラブを立ち上げた中岡禎雄先生は振り返ります。

<生徒インタビュー>

G20では、部長を含む3年生3人が発表しました。当日は英語で発表しましたが、取材時に日本語でも説明してくれました。


G20での写真
前列が総理夫人の安倍昭恵氏と発表した生徒、後列は大阪府知事の吉村洋文氏と顧問の徳野先生とネイチャークラブの中岡先生

中学生が発表した内容

「私たちは兵庫県の尼崎市にある成良中学校のネイチャークラブのメンバーです。私たちは、生き物の力を利用して、海や運河の水質浄化や生物多様性につながる活動を行ってきました。そして海や運河で育った海藻を肥料にして尼崎の海辺に森や畑をつくる活動につながっています。この活動から私たちは日本に伝わるJYUNKANという言葉の意味を学び、多くの仲間をつくることができました。私たちは地球の生物たちの命のつながりによって生きることができるのです。地球上のすべての命は、形は変わりつつも、つながり合い、支え合い、受け継がれています。これがJYUNKANなのです。世界の人々がJYUNKANの意味を理解して生活することができれば争いのない平和な社会をつくることが必ずできると信じています。JYUNKANのもとに私たちはみんな仲間なのです。このことを世界の人々に伝えるためにもこれからも活動を続けていきたいと思っています」(原文ママ)。

 また、他の生徒にもお話を聞きました。


 「部活動は収穫の作業が一番楽しいです。昨年は、りんごをカラスに食べられて悔しい思いをしました。でも、どうしてカラスに食べられたんだろう?と考えて、カラスも生きることに必死だから食べたんだと気づきました。昆虫も動物も人間も、みんな食べることで生きていると知りました」。

<先生インタビュー>

正しさを見極める目を養ってほしい

 あまっ子 Farm顧問の徳野先生にお話を聞きました。


 「植物も動物も人間と同じ生きもの。弱いものを大事にする気心があれば、友だちや親に優しくできるようになると考えています。トマトの栽培では、教科書に書かれていない方法で栽培することによって、連作障害をさけています。もちろん教科書は正しいですが、やり方を変えればそれだけが正解ではなくなる。トマトの栽培をきっかけに、何が正しくて何が間違っているのか、自分で判断できるようになってほしいですね」。

勝負じゃなくて、積み上げる活動

 ネイチャークラブを立ち上げ、現在も代表として生徒に指導する中岡先生は活動についてこう話します。


 「『形は変わりつつも命はつながっている』といつも話しています。たくさんの命をいただいて生きているので、他の命を助けるような生き方をしてほしいですね。入部した1年生のときは自信のない子もいますが、いろんな活動をする中でたくさんの人と出会い、さまざまな話しを聞いたり自分の話をしたりするうちに、ちょっとずつ自分に自信を持っていきます。私たちの活動は運動部のように勝負するんじゃなくて、毎日の活動を積み上げていくもの。思いやりの心を持って環境のために活動をしていると、優しい考え方ができるようになっていきますね」。

 毎日のように自然に触れ、環境について学ぶ生徒たち。その姿は、とてもたくましく見えました。彼らのこれからの活躍に期待が高まります。












取材・文 尼ノ物書キ組

立花莉絵子

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