ママと地域の架け橋に

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あまぴっと 店長の仁保麻衣さん

「どこでも教室」がキャッチフレーズのみんなの尼崎大学。阪急塚口駅前にある「あまぴっと」は子どもを持つママたちの実践の場であり、いわば「子育て学部」です。

 2016年5月にオープンしてから、2017年3月のクローズまで、約1年間にわたるママたちのチャレンジについてご紹介します。

駅前ビルの地下に子どもとママのスペースがあった


ベビーカー置き場も完備のカフェスペース。

 塚口さんさんタウン3番館の地下1階、飲食店や空き店舗の間から、小さな子どもたちの元気な声が聞こえてきます。ここは親子カフェ&レンタルスペース『あまぴっと』。壁がなく誰でも利用できる広いオープンなカフェにはカーペット敷きのお座敷があり、乳幼児がいてもゆったり利用できます。奥はレンタルスペースとして誰でも気軽に借りることができるので、お弁当講座やヨガ教室、パソコン講座など、子育ての枠を超えたジャンルのイベントが連日行われています。

 運営スタッフは全員子育て中のママ。約20人でシフトを組んでいます。利用者は子連れに限らず誰でも歓迎しており、駅ビルの中という好立地もあって、仕事帰りのサラリーマンや近所のお年寄りが立ち寄ることも。


子どもたちも一緒に描いたシャッター

 ときにははしゃいだ子どもが隣の店舗におじゃましたり、知らない大人と鉢合わせることもあります。どうしてこんなオープンな場所にママと子どもの居場所を作ったのでしょう? 店長の仁保麻衣さんにお話を伺いました。

ママがチャレンジする場所がほしい


 「ニホマイです~」と市内のイベントに明るい笑顔で登場する姿をよく見かけます。あまぴっとについて聞くと「ママたちは、何かやりたい気持ちも力もいっぱいあるのに、家に閉じこもりがち。子どもがいてもやりたいことをチャレンジできて、いろんな人と交流できる場をつくりたかったんです」とエネルギッシュですが、仁保さん自身も悩んでいた経験がありました。

 仁保さんは北海道出身の32歳。結婚出産とともに仕事を辞め、夫の仕事に合わせて尼崎へ移住してきました。見知らぬ土地でも持ち前の社交性で友人は増えましたが、子どもがいるとどうしても活動に制限がかかります。自分と同じように移住し、知り合いが少ない中で子育てに不安を感じている人の存在も気になっていたところ、偶然にも、現在の場所が安く借りられるという話を聞き、子育て関連のNPOスタッフや友人のママたちとともに「あまぴっと」を作ることを決めました。


具材持ち寄り手巻き寿司忘年会の様子。

 ただの親子カフェではなく、レンタルスペースを併設し、多様な講座を開催しているのは、ママに限らず様々な人に利用してもらうための工夫。「いろんな立場の人と関わることで世界が広がります。一つの価値観にしばられて苦しくなったときに、モヤモヤをはらす場所でもありたいですね」。

 あまぴっとの名前は、自動車が給油や整備に立ち寄る『ピット・イン』という言葉からきており、「ここで元気をチャージしたら、また外で仕事や子育て、家庭のことをがんばれるように」という想いが込められています。

 立ち上げに関わった小池笑子さんは「いわゆるママが支援される場はほかにもあるけど、ここでは私も活動する側になれる。ママである前にワタシですから」と語ります。この場所に励まされたママがたくさんいるのです。

もっと外とつながるために。場所を手放す決断


 尼崎のママたちの居場所となったあまぴっとですが、約1年の運営を経て、2017年3月11日(土)に閉店を決めました。チャレンジの場としての役割は全うしていたものの、急な子どもの発熱など都合の変わりやすいママたちだけでシフト管理し、場所を運営する難しさに直面していました。気軽にチャレンジすることが目的なのに、場所を守ることが負担になっては本末転倒ではないかという思いも芽生えてきました。

 そんな中で、市内には地域総合センターや公民館のような「場所」がたくさんあることに気づきます。「担い手や活用のアイデアを探しているところがいっぱいあるんですね。そんな場所を使わせてもらった方が、負担も減って、もっといろんな人とつながれるのかなって」。


 もちろんみんなで作った場所が無くなる寂しさはありますが、今後はよりいろんな世代や立場の人とママたちをつなぐ活動をしたいという仁保さん。ひとまずは今のメンバーで子育てに関する情報紙を作るサークル活動などを考えているそう。あまぴっとで生まれたチャレンジがいよいよまちの中へ出航していく、これからの展開が楽しみです。

※あまぴっとは現在運営を終了しています。ご注意ください。