「やってみたい」を持ちよる会議

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大庄公民館ことはじめかいぎ

「公民館」って行ったことありますか。講座や勉強会が開かれていて、登録するグループが色んな活動をしている公共施設。市内になんと6館もあるんです。今回はそのうちの一つ、大庄公民館の新たな取り組み「ことはじめかいぎ」をのぞいてみましょう。

おたがいのアイデアをつなげる場


お互いの顔が見えるよう、テーブルに輪になって会議がすすみます。

 土曜日の朝10時。大庄公民館2階のホールに人々が集まってきます。2016年9月から毎月開かれる、この会議の参加者は20代から80代まで幅広い年齢で、毎回顔ぶれも様々。共通点は「大庄地域でこんなことをしてみたい!」というアイデアや想い、そしてそれを応援しようという気持ちを持っていることです。

 会議を進行するファシリテーターの藤本遼さん(26)の合図で、2時間の会議がスタートします。町会の副会長さん、千葉から引っ越してきたばかりの女性、公民館の歌声クラブで活動する男性のほか、地域福祉にかかわる職員など10名の参加者は、初対面の人も多く、ゆるやかに自己紹介がはじまります。


公民館の玄関ですくすく育つ一寸豆。実がなるのをみんなで楽しみにしています。

 その後、参加者のやってみたいことをきっかけに、アイデアがつながっていきます。例えばこんな感じ。

「大庄地域の空き地を使って野菜づくりをしたい」
「まずは公民館の玄関でプランターからはじめよう」
「コーヒー豆の袋で育てたらおしゃれとちゃう?」
「袋なら知り合いから調達できるわ」
「せっかくなら尼崎ゆかりの野菜がいいな…」
「富松一寸豆の農家なら知り合いがいます!」

 というやりとりから、現在玄関では、コーヒー袋で富松一寸豆が育てられています。「ことはじめかいぎ」は大庄公民館を舞台に新しい活動を生み出していきます。

公民館ってなんだろう?


会議で出てきた言葉をホワイトボードに記録していくのは、福井さんのお仕事。

 実は6館ある公民館の中で、最も来館者数の少ない大庄公民館。3つの公民館を転任し、5年前に赴任してきた市職員の福井玲さん(55)は「公民館本来の活動に立ち返ろう」と、この会議を企画しました。「趣味や教養の講座だけでは、民間のカルチャースクールにはかないません。公民館は本来、民主主義の場。地域の人が自分たちで館をどうするのか話し合うような機会を作りたかったんです」という想いが込められた「ことはじめかいぎ」。それぞれが得意なことを持ち寄って、対話を重ねるその雰囲気はなんだか大学のゼミのようなのです。


昨年千葉から引っ越してきたばかりの岩佐眞澄さん(右から2番目)はボランティア活動の悩みを会議で相談。

色んな人が出会う館に


 この日の会議のテーマは、地域の人にもっと公民館を知ってもらうためにどうしたらいいかというもの。大庄公民館は日本を代表する建築家・村野藤吾の設計であることから、彼の誕生日にちなんだ5月のイベント開催に向けて内容が話し合われていきます。「育てた一寸豆の収穫祭をしよう」「建築のガイドツアーもします」「村野藤吾をテーマにした歌を作って歌声グループで歌ってみよう」「洋画グループは建物のスケッチを描いて展示したい」などアイデアは尽きません。

 そんな中、ある女性が「公民館に毎週通っているけど、他にどんな活動があるのか知らなかったです」とつぶやきました。すると「色んな年代や趣味の人が公民館を使っているけど、今まで接点がなかったんですね。では5月はそんな接点が生まれる会にしましょう」と藤本さんがすかさず参加者の気持ちをつないでいきます。


参加者の思いに耳をすまし、「それおもろいですね」と時に盛り上げるファシリテーターの藤本さん。

 「今まで一参加者として公民館に来ていた人が、自分のスキルや経験、できることを誰かのために活かしていくような場になればと思っています」という藤本さんも、実は大庄地域出身・在住。各地でこうした場づくりを手がける彼にとっても、「ことはじめかいぎ」は地元での新たな挑戦だといいます。肩書きや所属する団体を問わず、誰でもいつでも気軽に参加できるこんな場がまちじゅうにあるのも「みんなの尼崎大学」の魅力なのです。