材木屋さんが村になる? 一人ではできないことも、仲間がいれば

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 いつか叶えたい夢や、やってみたいアイデアは誰にでもあるもの。東難波町にある材木屋の吉田悦造商店では、自分の思いを周りに伝え、協力しあうことで気づきや学び、そして新しい動きが生まれています。


まちの一角に現れる不思議な風景

材木屋さんの中にいろんな店がある!?

 吉田悦造商店は戦前から3代続く材木屋ですが、最近、若者たちが店の敷地内に小さな小屋を建て、DIYパーツショップやレザーショップ、コーヒースタンドを次々にオープンさせています。

 時には服屋や地元の八百屋が店を出すイベントを開催し、ずいぶんにぎやかです。どうしてこんなことが起きているのか、店主の吉田浩之さん(53)にお話をうかがいました。


この1年の出来事を嬉しそうに語る吉田さん

「父から店を継いで、『尼崎で材木を買うなら吉田』と言われる店を目標にしてきました。でも材木屋って敷居が高いのか、専門の業者さん以外は入りにくいみたいで…誰にでも気軽に立ち寄ってもらえる店にしたいと思って、色んな人に相談していたんです」と吉田さん。

 その一人が、当時JR尼崎駅の近くに店を構えていたDIYパーツショップの足立繁幸さん(36)。ものづくりの素材を販売しているという共通点もあり、頻繁に相談していました。一回り以上年下の足立さんから学ぶことは多く、店先の「カキ・クリあります」という看板を見て、「それじゃ木を売ってるってわかりませんよ」と指摘されるなど、「彼の言う通りですよね、自分の頭がいかに固くなっていたかと気づかされました」と振り返る吉田さん。

 転機が訪れたのは2016年の5月。足立さんの店が親会社から独立、移転するタイミングで、吉田さんが敷地内へ出店を誘いました。「彼とはとにかく気が合うし、一緒にやるといいことばかりだと思ったんです。お客さんに紹介をしたり、商品開発をしたり。何より、みんなでいると楽しいでしょう」。

DIYで作りはじめた小屋は7月に完成し店がオープン。その後はお客さんのつながりから、9月にレザーショップ、12月にはコーヒースタンドが次々に開店し、わずか半年で、吉田悦造商店の風景が一気に変わりました。

尼崎傾奇者集落(あまがさきかぶきものしゅうらく)誕生

 入居店や関わるメンバーが増え、この場所は「尼崎傾奇者集落」と名づけられました。「話し合いで決まったんですが、実は、変わった名前だなあと最初はピンとこなかったんです。徐々になじんできました」と笑いながら答える吉田さん。自分の敷地の名前すら若い仲間たちにゆだねる姿には、謙虚な姿勢と、彼らへの信頼がうかがえます。


事務所にもKABUKIMONO VILLAGE(カブキモノビレッジ)のロゴが

 ユニークな名前には、面白い生き方をしている人(傾奇者―かぶきもの)たちが集まって作る「村」というコンセプトが込められており、吉田さんはその中で「村長」という役回り。

 「集落の中で、助け合いながら経済が回る小さな社会を目指しています。みんなで協力して、ここを『尼崎で一番オモロい楽しい場所』にしたいと夢見るようになりました」

 「私的な」場所を「公共的」に開いていった吉田さんの取組みを聞こうと、11月にはみんなの尼崎大学オープンキャンパスを開催。人のつながりから生まれる動きについて学ぶことができました。


第5回みんなの尼崎大学オープンキャンパスの様子(写真クリックで記事へ)

 2016年12月、偶然通りかかったご夫婦が「コーヒーが飲めると思って」と入って来ました。吉田さんが尼崎傾奇者集落の話をすると面白がり、店を回ってヒノキのまな板を買っていったそうです。

 「お買い上げいただいたこと以上に、通りすがりで入ってきてくれたことが嬉しくて。材木屋の僕だけの力ではできなかった、みんなのおかげです」。

 自分の夢を周りの人へ語り、仲間をつくることで化学反応が起きる。ひょっとすると、「協働」ってこういうことかもしれないな、と吉田さんから教えてもらいました。


第3土曜日は吉田悦造商店の定休日。搬入トラックが入らないことを利用してイベントを開催しました

尼崎傾奇者集落の「第一村民」DIYパーツショップの足立繁幸さんの「尼ノ民」インタビューはこちら→ まちなかの「村」から発信する「ほんとうのDIY」