学生生活

 平成31年1月26日(土曜)の午後に尼崎市立すこやかプラザにて開催された「高校内居場所カフェを兵庫県につくろー」シンポジウムに参加しました。
 主催はNPO法人スマイルひろばのみなさん。企業組合はんしんワーカーズコープ、一般社団法人ポノポノプレイスほかたくさんの応援を得て開催されました。

 なぜ、今、「高校内に居場所カフェ」が必要なのでしょうか?


基調講演をする一般社団法人offceドーナツトーク代表の田中俊英さん

【基調講演】
 田中さんは大阪府立高校にて7年前から「高校内居場所カフェ」を運営しています。2014年に毎日放送で放映された「ここにおいでよ」というドキュメント番組でも紹介されました。

 「高校内居場所カフェ」は子ども食堂ほどに全国に展開しているものではありませんが、それでも地味にゆっくりと広がっています。大阪で15、神奈川で12、北海道1、宮城2、滋賀1、長崎でも最近立ちあがっているそうです。

 居場所カフェをする以前、田中さんは「淡路プラッツ」という大阪・淡路で15年ほど引きこもり支援をしてきました。当事者のほとんどが高校中退。籍だけ通信制の高校に置いて、連絡もとらないままに卒業か中退かわからない状態となり、28、29歳になって焦って淡路プラッツへーという流れを目の当たりにしていたそうです。

 50歳を目前に、高校中退を受け入れる側から予防する側へと転職を決意。しかし当初予定していた高校では校長先生が異動となり、頓挫。仕方なく講演活動をしていたときに大阪市内の公立高校の校長先生から直々に要請を受けたのが始まりです。高校側も不登校、非行、障害のある生徒をなんとかしたいと思っていたものの、現行のスタッフでは手が回らず、どうにかしたいと模索していたところだったそうです。

 貧困に置かれている状況のなかで、虐待を受けている子は多いと田中さんは考えています。そのなかで、「高校まで通えている子は「虐待サバイバー」つまり希少な生き残りです。進行形でネグレクトを受けているような生徒は、いくら町の中で開かれていても貧困支援の居場所には来ません。なぜなら恥ずかしいから。貧困者としてバレてしまうから。でも、人を求めているし、誰かにグチをこぼしたいと思っています。」

 朝、高校内カフェに来て、母親のグチをスタッフに言って教室にいく子が現に存在します。高校内に自由な空間、サードプレイスが求められているということです。

★田中さんが高校内居場所カフェで気をつけていること
 ①安全・安心を与える場→生徒たちがホッと息をつける場
 ②個別ソーシャルワークを展開→なにげない会話の中から課題を見つけて生徒にアプローチ
 ③文化のシャワーを浴びせる→親の持ってる文化の外にある別の価値観を供与する


第2部、神奈川県の事例報告をするNPO法人パノラマ代表理事の石井正宏さん

【事例報告】
 石井さんは横浜市、大和市内で課題集中校と呼ばれる高校でおよそ8年前から高校内居場所カフェを開催しています。
 田中さんがハイリスクアプローチとすると、石井さんはポピュレーションアプローチ。170人以上の生徒が訪れるカフェのなかで、生徒たちのおにぎりの食べ方や味噌汁の飲み方を見て、ソーシャルワークに繋いでいます。

 石井さんも田中さんと同様、引きこもり若者支援は天井から落ちてくる雨粒をバケツを置くような支援であり、これには時間・コストが非常にかかることから、中退、引きこもりを防ぐ予防支援に取り組むことにしました。

 中退、進路未決、フリーター、早期離職は増えており、石井さんは、積極的中退者はいいけれども、消極的中退者、つまり引きこもり、ニートを増やさないことに注力しています。進路未決になりやすい生徒の特徴として、女子とシングルマザー、そして学力下位層校や定時・通信制高校に多いと分析しています。
 社会に出て、くじけることがあっても、高校が帰ることのできる場になればいいとお考えです。
 
 石井さんの運営する高校内居場所カフェの運営にはボランティアが200人もいるのだとか。この登場人物が多いほど生徒たちの生存確率が上がるような実感があると言います。ボランティアは親の固定観念にない、外から新たな文化を与える存在であり、大人への信頼感を失った生徒たちに高校生3年間に信頼を貯えさせることができる存在です。社会に出るまでの高校3年間の助走期間内にカフェというサードプレイスで出会う変な人が生きるストライクゾーンを広げ、生きやすさに繋がる、とのことでした。


【パネルディスカッション】
 第3部では、どうすれば兵庫県内に高校生居場所カフェができるのかを中心に5人のパネラーのお話をお聞きしました。

 石井さんが神奈川県で高校内居場所カフェを開催したときに図書館での開催を引き受けた松田ユリ子さんは「図書館は本来、静かに本を読む場では?という疑問もあるでしょうが、本はメディアの1つ。でないと高校生の感覚と合わない。図書館は生徒にとって情報に出会う場所。図書館でメディアと出会って情報を得て生きる力を得る場であり、石井さんから使いたいと言われてやった!と思った」そうです。

 石井さんが居場所カフェを導入した県立高校の当時の校長先生、中田正敏さんは「当時の赴任校は毎年進級時に生徒が数十人単位で減る学校だった。対話を重視する風土づくりに取り組み、1年生から2年生に進学するで退学が2名となったところまでよかったが、丁寧に対話して生徒たちが育っても、卒業、社会に出て適応できないと学校に帰ってくる。以前は余裕があったが今度はその応対ができなくなってしまった。そこで校外に手を求めた」とのことでした。

 尼崎で高校内居場所カフェを実施したいと考えている馬場義竜さんは企業組合ワーカーズコープの代表理事です。「現在、高校を出た後、就職したいけどできない人の窓口をしてるいるが、支援機関に来たときに支援がすごく難しい状態にある」ことから高校生の間にそういうアプローチに入りたいと考えています。

 司会のNPO法人スマイルひろばの小倉祐輔さんから、「兵庫県内に高校内居場所カフェをつくるにはどうすればいいか」との問いには、

●田中さん:「高校生居場所カフェの意義を校長先生に理解してもらうことが大事。伝えなくてはならない」
とのことで、どういう伝え方がいいかという展開に。

●松田さん:「生徒が親でも教師でもない大人に出会えるカフェだから地域の人がコミットしやすい。飲み物、食べ物、お金の寄付も受けやすい」
●石井さん:「大人は大人でも教員でいいのではという議論があるが先生はどこまでも評価者と生徒は見ている。小中高と大人不信、社会不信になってる子どもたちをそのまま送り出すのかと問いたい」
●中田さん:「教員として身分上できないことを石井さんたちはできる。情報交換していっしょにやっていく意義がある」
●馬場さん:「学校で習ってることと外に出ると違うことは多々ある。1つの文化、1つの価値観の中で育って、社会って終わってるなんて思うことがもったいない。多様な価値を伝えたい」

●石井さん:「やりたくない校長先生は職場体験に行ってますので不要ですと言うだろう。事例が集まってきてて、生徒が変わってきてるという物語を持っていかないといけない」
●松田さん:「計7年という先生の雰囲気がある。長い目でみる石井さん。成果を出さなくて良い存在。先生と石井さんと両方いることが大事」
●田中さん:「意義は、『出会うことを続ける』こと」
●石井さん:「高校にい続けなければいけない。OB、OGがくる」
●田中さん:「なんで続けてるかなと思う。大阪でもとある校長先生のような敬愛できるキーパーソンがいてた。1対1ではなくて、ラインで繋がる関係、多様な繋がりがあればこそ」

 このあと会場からの質問を受け、閉会となりました。

 私もこの会に参加する前は高校内に居場所カフェがいるのか?と考えていた1人でしたが、パネラーの皆さんのお話を聞いて、以前、引きこもり支援をしているNPOの方々の数々の苦労話を思い出し、必要性を改めて認識することができました。


この記事を書いた人

みんなの尼崎大学事務局 立石孝裕

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