学生生活

観光家、コモンズ・デザイナーの陸奥 賢さん

 3月6日に、尼崎市役所の若手職員有志による自主研修グループ「夜カツ」に参加してきました。
 ゲストの観光家、コモンズ・デザイナーの陸奥 賢 (むつ さとし)さんのお話を聞きたかったからです。

 コモンズとはコミュティと少し違い、コミュニティができあがった地域共同体を指すのに対し、コモンズはコミュニティから外れた人も入れる場を指します。
 詳しくは陸奥さんのブログ(←こちらをクリック)をご覧ください。

 陸奥さんは、
・あますい!~尼崎を粋なまち歩きと酔な立ち飲みで盛り上げる~
・まわし読み新聞
・歌垣風呂
・直感読みブックマーカー


 そして、この日体験した
・当事者研究スゴロク

 などなど、面白い企画を世に打ち出している方です。


当事者研究スゴロク 空白のマスには参加者の人生の失敗談や挫折談が

 当事者研究スゴロクは、失恋、受験失敗談などなど、人生の失敗や挫折をみんなで共有するゲームです。
 世にスゴロクといえば、「人生ゲーム」が有名ですが、これは人生のステップアップを目指す、いわば成功のベクトルを競うゲームのこと。
 しかし、当事者研究スゴロクは違います。いわば「降りていく生き方ゲーム」なのです。
 
 例えば、
・大学院の試験日をまちがえて受験できなかった
・酔った勢いで恋人に自分から別れを告げたのに後悔し、ひきずっていた
・高校時代、スカートの下にジャージを履いていて、立っている人のジャージを後ろから下にずり落とすのが流行っていた。自分が友達にジャージをずらされた時にパンツまで脱げてしまった。
・ダイビングの途中でお腹がいたくなり、そのまま…

 などなどの失敗談がメンバーから寄せられます。

 寄せられた失敗談でスゴロクの空白マスを埋めます。その際、レアな内容であればあるほど「6マス」進む、よくある失敗は「1マス」進む、と先に進める貴重なマスになります(笑)。
 


レアな失敗談からよくある失敗談を並べて順位付け

 当事者研究スゴロクの「当事者研究」とは、精神障害者施設ではじまったアセスメントとリハビリテーションのプログラムです。

 精神障害を持っている方は、「〇〇さんを傷つけろ」といった幻聴が聞こえるらしいのですが、それを病気としてとらえるのではなく、「幻聴さんが来た」と温かく見守り、「明日もきてください」と受け答えをしていると、その幻聴さんは「最近、がんばってるな」といった、ポジティブな反応に変わってくるのだそうです。
 付き合い方を変え、治すのではなく、「弱さ」を抱えて、活かしていくことを「当事者研究」と呼ぶのだそうです。

 この「弱さ」をコミュニケーションツールにできないか、自分の弱さを笑いやネタにする大阪らしさが活きるのでは、と陸奥さんが作ったのが、当事者スゴロクゲームです。挫折のエピソードを喋ることで仲良くなるゲームなのですが、東京でやるとなかなか会話が弾まないのだとか。今回は大きく盛り上がり、「さすが尼崎」とお褒めいただきました。(笑)

 この当事者スゴロクゲームをはじめ、陸奥さんの作品は、オープンソースで誰でもダウンロードできるのが特徴です。
 https://goo.gl/cdhflj
 http://wp.me/pxlkK-27j


 陸奥さんのアイデアの源泉は、逍遥(しょうよう)。無目的にふらふら歩くことにあるそうです。
 「今は、効率よく出会う社会、スピーディな社会に慣れきってる」が、紆余曲折、遠回りでないと、「自分の中にないものに出会わない」とお考えです。

 例え話として、インターネットで本を買うのは、ボタン1つクリックするだけで欲しい本が郵便受けに届いて、すごく便利なようですが、陸奥さんの考えは違います。「すごい損してる、機会を失ってる」と。「古本屋に行こうと着替える。本屋で本を探すとハッと目に留まる本があったりする。街を歩いていてこんなことあるんやと気づく。クリック1つで欲望通りになりますが、欲さないものに出会わない。偶然の出会いがピンとくるんです。それがアイデアの入口かな。」

 インドでは「人間は完璧な存在ではない。だから他人に迷惑をかけられても文句を言わず助けろ」という教えがあるのだそうです。普通、そうじゃないやろ!と排除するのではなくて、優しい社会をつくる、多様な生き方を認める社会を作りたいとおっしゃっていたのが印象的でした。


 陸奥さんから、「今、効率的、合理的に考えられていることが実はすごく貴重な機会を逃している」というお話が大変、胸に刺さりました。


この記事を書いた人

みんなの尼崎大学事務局 立石孝裕

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