みんなの尼崎大学×〇〇=???

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 まちに学びを巻き起こす!みんなの尼崎大学。
 今回の記事ではみんなの尼崎大学×行政の事例をご紹介いたします。

誰かの悩みをオンラインでみんなのテーマに

 ソーシャルワークって言葉を知っていますか。日常生活に困難を抱えている人たちの相談に乗ったり、必要なサポートをする仕事のこと。庁内でも健康福祉局、こども青少年局など、様々な部局で、ソーシャルワーカーが働いています。そのうちの一人が、みんなの尼崎大学相談室にやってきたのは新型コロナウイルス感染症が広がってきた2020年春のことでした。


 相談者は尼崎市子ども青少年課の内田扶喜子さん(写真中 現在はこどもの人権擁護担当)。社会福祉士としてこれまでこどもの居場所支援やこども食堂の立ち上げに関わってきました。「コロナ禍でステイホームの時間が増え、人との関わりが薄れると、子どもたちはゲームやスマホ、大人はギャンブルやアルコールによりどころ求めて、アディクション(依存症)関連問題が増えてくると思いました。」という内田さん。ソーシャルワーカーの仲間たちと組織している「尼崎ソーシャルワーク研究会」の活動を、みんなの尼崎大学と一緒にできないかという相談でした。

 みんなの尼崎大学でその年の3月に開いた「コロナと人権」というオンラインゼミを見て、「深刻な問題でも親しみやすく、真面目に話し合える雰囲気が尼崎大学ならできるかも」と内田さんは思ったそうです。


内田さんによるアディクション(依存症)基礎講座

 「コロナと依存症 やめられないをかんがえる」と題したオンラインゼミでは、アディクションの種類や状態についての基礎講座や、パチンコ依存症支援に取り組む弁護士の吉田哲也(てつなり)さんからの話題提供、尼崎市疾病対策課の宮本晃子さんからAUDIT(オーディット)というスクリーニングテストなどソーシャルワークにかかわる専門職の話に、多くの尼大生が新たな学びや気づきを得ることができました。「オンラインの気軽さもあって、当事者や専門家だけでなく、みんなのテーマとして勉強会を開くことができました」と内田さんも手応えを感じた様子。


出屋敷駅近くの事務所を拠点に活動する武輪さん

 中でも印象的だったのは、アルコールや薬物依存の課題を持つ方の支援する「リカバリハウスいちご尼崎」で精神保健福祉士として働いている武輪真吾さんのお話。「当事者の方が集まって互いの経験を語り合う断酒会が、コロナで会場使用が制限されたり、私たちも対面型の研修を開催することが難しくなっていたことで地域での啓発活動に課題を感じていました。」と今回のオンラインへの挑戦で、当事者の方の語りを広く聞いてもらう機会になればと、尼崎市断酒会の会員の方に依頼し、アルコール依存症に至るまでと回復の物語を聞かせていただくことになりました。


オンラインでできることの可能性を感じているという内田さん

 「オンラインの空間でどうなるのか不安でしたが、同じエピソードでも聞くメンバーによって語り方が変わることや、様々な立場の方と場を共有することの大切さに改めて気付かされました」と武輪さんは振り返ります。
 尼崎市では、疾病対策課とリカバリハウスいちご尼崎が取り組む「飲酒と健康を考える会」に、大勢の人たちが集まってネットワークが形成されています。今回のオンラインゼミを通じて、その裾野がさらに広がりました。
 「みんなの尼崎大学のワイワイした楽しい雰囲気は魅力。会って話したいけれど、オンラインという場でも通じ合えるという経験になりました。社会に埋もれがちな大事なテーマを、今後も一緒に語り合っていきたいですね」と、今後の展開にも期待が高まります。

アイデアと実験で道路を楽しい空間に


 駅前や公園、まちなかにある広場をもっと魅力的な空間にしたい。そんな思いで立ち上がったのが「みんなの尼崎大学阪塚ひろば部」。阪急塚口駅の南側を中心に活動するメンバーで、尼崎市都市戦略推進担当課の白崎友朗さん(写真右)に話を聞いてみました。インタビューするのは生涯学習、推進!担当課の坂井翔馬さん。部局を越えた取り組みの可能性について探ります。

 きっかけは令和2年。さんさんタウン3番館の建て替えにともなって、阪急塚口駅南側の駅前広場の改良を計画していた道路整備課と一緒に、みんなの尼崎大学の相談室へやってきた白崎さん。「整備した後にきちんと使ってもらえる広場を作りたかった。そのためには作る段階から色々な人にかかわってもらう必要があったんです」と2年前を振り返ります。


尼崎市役所の隣にある橘公園のベンチで語ってくれた白崎さん

 相談室に集まっていた尼大生たちに計画の内容を伝えたところ、みなさん興味津々の様子。「広場でランチしたい」「芝生が欲しい」など好き放題な意見が飛び交う勢いで、部活動にできないかと、「ひろば部」の構想が生まれました。


「スカイコムをつかいこむ」というシャレのきいた社会実験の様子

 令和3年10月には駅前広場の社会実験として、駅前の空間にテラス席を設けてキッチンカーを呼んだり、スカイコムという2階の広場に芝生を敷いて、スケートボードのパークを作ったり…。「ユース交流センターのサポートや、大学院生が調査してくださったり、市役所の担当課だけでなくひろば部と名乗ったことで仲間づくりがしやすくなったのがよかったです」という白崎さん。おたがいがやりたいことやできること、知恵や工夫を持ち寄るまさに“尼大精神”が光ります。


ユース交流センターで活動するチームがデッキを設置して体験会を開催

 白崎さんの所属する都市戦略推進担当課では、タスクフォース(TF)と呼ばれるチームが部署を横断した取り組みに挑戦しています。道路や公園、河川などの土木部門や、規制や誘導を担当する都市計画部門の40歳以下の若手職員たちが、市内のまちの課題について新たな動きを見せています。「阪神出屋敷駅前の広場の老朽化した柵や照明などを地域の人たちと一緒にペイントしました。地元の事業者を中心に、広場の整備もはじまっています」と、
ここでも「ひろば部」的活動が広がっています。


 阪急塚口駅前では、園田学園女子大学経営学部と一緒にスカイコムのベンチをペイントしたり、フォトスポットを作り商店街とも連携した企画が進行中だとか。「市役所の職員が、地域の人と出会う場として尼崎大学の存在はありがたいですね。阪急塚口駅前ではじまった部活ですが、今後も一緒に事業をやっていきたいです」。

ひろば部のインタビュー動画はこちらでも。

相談することで選択肢を広げる。

「こんにちは!」

 大庄北生涯学習プラザの中庭にダイバーシティ推進課のみなさんが来てくださったのは、2021年10月のこと。

「人権に関する講座のことで相談があって」。

 そんなところから「みんなの尼崎大学」との関係がはじまっていきました。


インタビュー時の写真。ひと咲きプラザで行いました

 マイクロアグレッション。日本語に訳すと「小さな攻撃性」という意味になります。例えば「ブラジル人なんですね。じゃあサッカーとか上手いんですか?」「若い女性はスイーツと旅行が好きだよね」など、無意識の偏見や決めつけ、無理解や差別心のことをマイクロアグレッションと言います。発した方は特に差別的だと思っていない、むしろ褒めているとさえ思っている言動が、時に受け手を傷つけることもある難しい問題です。

 多様化する人権問題を市民啓発にどうつなげていくか、そんなダイバーシティ推進課のみなさんの最終的な相談は、「今回は『マジョリティ特権(※)』をテーマにしたオンラインの研修会をしたい」というものでした。ただ、今まであまりオンラインでの実施経験がないので運営や進行が不安だということ、また、自分たちの課からの周知や広報だけでは参加者も集まるかどうか悩ましいとのことでした。
(※『マジョリティ特権』=マジョリティ性を多く持つ社会集団にいることで、労なくして得ることのできる優位性・恩恵)


インタビューをするみんなの尼崎大学担当の安藤さん

 そうした背景のもと、3ヶ月の相談期間を経て「みんなの尼崎大学」と一緒に企画を練っていきます。ZOOMの使用方法、ZOOMでの意見交換の仕方、目を引くキービジュアルの作成方法(制作のためのツールについてもお伝えしました)、進行スケジュール組み、集客、当日運営、パブリックビューイングの実施など、さまざまな部分でノウハウをお伝えしたり、運営のサポートをしたりしました。


今回のイベントバナー。Canvaというツールを使って担当課の高村さんが作成しました。目を引きますね!

当日はパブリックビューイングで現地参加した人も

 結果、参加者は50名ほどになり、想定以上に学びが深まる機会となりました。担当の高村さんは「さまざまな面でサポートいただけてよかった。今まで持っていた選択肢ではできなかったことが、今回相談させてもらったことでできたように感じます。チャット機能が使えるZOOMアカウントの貸し出しもありがたかったです」とお話しくださいました。


今回準備に奔走していた高村さん

 誰でも活動や企画の相談ができる「みんなの尼崎大学相談室」は、園田にあるひと咲きプラザだけではなく、各地区での出張開催も行っています。ぜひ、気になる方は一度足を運んでみてください。市民の方も、市役所の方も大歓迎です。