第11回 みんなの尼崎大学オープンキャンパス @NPO法人 月と風と

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みんなの尼崎大学。「みんな」というのは、だれのことなのでしょうか。

賑やかな印象の外観。ここは、重度心身障害者の方の生活に関するサポートを行う「NPO法人月と風と」の事務所です。


月をモチーフにした大胆なオブジェが目印。
月をモチーフにした大胆なオブジェが目印。

 第11回のオープンキャンパスは、「しょうがいのある人に学ぶ、おせっかい」というテーマで、こちらを会場に開催しました。

 外のわいわいした風景とは打って変わって、舞台さながらの照明で静かにはじまった今回。「おせっかい」という言葉をたよりに、尼崎における障害福祉の取り組みの歴史や現在に迫っていきます。


帽子をかぶった清田さんを中心に、この日は床に座って開催。
帽子をかぶった清田さんを中心に、この日は床に座って開催。

 話題提供をいただく「NPO法人 月と風と」代表・清田仁之さんから最初の投げかけは「目を閉じてください」。ドキドキしながら目をつむった参加者のおでこには、色とりどりのシールが貼られていきます。自分に何色のシールが貼られているのか、自分にはわかりません。


これから何が起こるのか…ワクワクして目をつむる参加者。
これから何が起こるのか…ワクワクして目をつむる参加者。

 「目を開けて、同じシールの色の仲間を探してください」という合図とともに、参加者はどんどん同じ色のメンバーを見つけてチームをつくっていきます。ですが、2名だけ、なかなかチームをつくれない方がいらっしゃいます。それもそのはず、最初から金色と赤色は1枚ずつしか用意されていないのです。


一人しかいない金色のシールに注目が集まります。
一人しかいない金色のシールに注目が集まります。

 「これが、先天性の障害をもって生まれてきた人の気持ちです。こうやって、知らないうちに、仲間から外れているということがあるのです」。きっと、他の方たちも進んでのけ者にしているわけではありません。仲間がつくられる中で「他人と違う」ということが、孤立を強めていく。そういうことを、参加者のみなさんに体験いただきました。

 今回の参加者の中には、「福祉」や「障害」に関わりが薄いと感じている方も多くいらっしゃいました。話題は障害福祉の制度の話からはじまります。

 障害福祉の制度は、大きく分類すると、障害者の生活になくてはならない「自立支援給付」と、あればより充実した生活を送ることができる「地域生活支援事業」の2つに大別されるそうです。その分類の中で、さらに詳細にさまざまな制度があります。参加者も知らない話が多かったようで、メモをとる手が早まります。


話題は次々と模造紙に板書されていきます。
話題は次々と模造紙に板書されていきます。

 また、今回のテーマである「おせっかい」という切り口から障害福祉を見てみると、尼崎で行われてきたさまざまな動きが見えてきます。そのうちの一つが、市バスのノンステップ化です。

 尼崎市では、2009年3月に全国で初めて全車両のノンステップバス化を達成しています。実はその影には、とあるおせっかいな人の存在がありました。障害者支援にかかわっていたその男性は、市交通局に足しげく通い、バスの買い替え時期を調べてノンステップバスの導入を粘り強く交渉したといいます。そのほかにも、障害者の当事者やその家族が、障害者を取り巻く環境づくりに声を上げてきた歴史があることを聞かせていただきました。


手話通訳で聴覚障害のある方にもその言葉が届けられます。
手話通訳で聴覚障害のある方にもその言葉が届けられます。

 その後、清田さん自身が運営する「月と風と」の活動紹介では、「一緒にみんなでお風呂に入ったら面白そう」と清田さんの思いつきから生まれた、障害者と地域住民が一緒に大きなお風呂に入るプロジェクトや、音楽やアートを通じてお互いのことを知るイベントなど、その独特の視点に会場から笑いが起こります。
 「おせっかいというのは、決められていること以外に、どんどんチャレンジしていくこと。障害福祉の制度外の部分での活動は、すべておせっかいなのです」という清田さんの活動に込めた思いが特に印象的でした。「月と風と」では「こんなのあったら楽しいかな?」「自分たちも楽しみながら、利用者の方も喜んでくれるかな?」という気持ちを大切に活動がすすめられています。

 今年度からはこうした思いを、より広く届けようと「市民福祉のつどい」という35年続く尼崎市の催しを、提案型事業委託という制度を使って「ミーツ・ザ・福祉」という企画に生まれ変わらせています。ここでは、障害者も健常者も一緒になって、意見を出し合い、できることを分担しながら、11月11日に開催されるイベントに向けて準備をすすめているそうです。
 「こんなのあればいいかな?」「こうしたらもっと良くなるんじゃないか?」そういうことを、みんなで投げかけ合う。そこには支援する側と、支援される側という関係ではなく、○○さんと○○さんという名前を持った個人の関係があります。


顔が見えるサポートの大切さを学びました。
顔が見えるサポートの大切さを学びました。

 清田さんは言います。「顔の見える関係性をつくっていくことが大切。ヘルパーの僕は、利用者の友達になれません。それなら、まちなかにたくさん友達ができるような仕掛けや仕組みを考えていかないといけない。そういう機会がたくさんあるまちが、だれにとっても生きやすいまちなのではないかと思います」。

 みんなの尼崎大学。「みんな」というのは、だれのことなのでしょうか。今回のオープンキャンパスを経て、確かにその「みんな」の幅が広がったような気がします。今までであったことのない事柄にであうこと、そして、それについて考えてみること。そこに学ぶことの本質があるのかもしれません。

(みんなの尼崎大学事務局 藤本遼)

ミーツ・ザ・福祉
https://www.facebook.com/meetsthefukushi/
清田仁之さんインタビュー/尼ノ民 
https://amanism.jp/people/entry-96.html