オープンキャンパス

 第24回オープンキャンパスのテーマは、「『らしさ』の呪いを解くために」。私たちは知らないうちに「こうであるべきだ」というメッセージを受け取ったり、誰かに送ったりしているのではないでしょうか。
例えば、「お母さんなんだからしっかりしなきゃ」とか「仕事ができるオトコはかっこいい」など、誰しも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
 今回は、そんな日常の中にある「らしさ」のもやもやについてのぶっちゃけトークをしました。

 オープンキャンパス初の試みとして、8月20日(火)、9月10日(火)に事前勉強会として「ゆるゼミ」を開催。ジェンダーの観点から炎上した広告動画を見たり、テーマに関係のある本を持ちよって読書会をしたりと、現在のジェンダー界隈ではどのようなことが問題になっているのかについて勉強しました。そして9月28日(土)は、ゲストを招いて普段感じている「もやもや」について語りあうトークイベントを開きました。


2回のゆるゼミを経て、トークイベントを開催しました


それぞれの境界を超えた3人のゲスト


 今回のゲストは「韓国から日本に」来て働く林宣伶(イムソニョン)さんと、「働きマンから主夫」となった藤井秀規さん、「オトコからオンナ」になった筌場彩葵(うけばさき)さんの3人。まずは、3人の自己紹介からスタートしました。


課程/NPO法人shearing caring culture事務局
1979年韓国生まれ。中国で語学留学の際に日本人男性と出会い結婚。2005年に来日。中学校2年生の娘と苺農家の夫と夫の実家のある千葉県に住みながら週半分は大学院のある神奈川県で生活している。
キャリアとしては航空会社グランドスタッフ、千葉大学事務補佐、信州大学助教など
<イムソニョンさん>慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士(写真をクリックするとプロフィールが表示されます)

 韓国でのソニョンさんの世代は、子どものころから勉強に励んで自己実現するように育てられてきたそう。しかし、結婚したとたんに従来からの「妻」としての役割を求められることに。チョ・ナムジュ著『82年生まれ、キム・ジヨン』で描かれる世界は、まさに韓国人女性にとっての日常だと話します。「憂鬱になるからこの本は読んでいません」と言うソニョンさんは、韓国人男性の「俺について来い!」という気質が嫌だったそう。
「絶対に韓国人男性とは結婚したくないと思っていました。だからこの本の主人公には『ほらそうなるやん!』と言いたいですね」と苦笑いします。


6年間システムエンジニアとして仕事に没頭する。長女の誕生をきっかけに妻が倒れたときのことを想像する。家事・育児に対して何もできない状況から抜け出すべく、試行錯誤の末専業主夫の道を選ぶ。1年間の主夫期間を経て再就職をし、今に至る。
<藤井秀規さん>元専業主夫・元SE・現フォークリフト整備士(写真をクリックするとプロフィールが表示されます)

 藤井さんはシステムエンジニアとして働いているときに、会社で初めて育児休暇を取得した女性に続いて、男性初の育児休暇を取りたいと上司に相談したそう。抱えていたプロジェクトから抜けることになったタイミングだったこともあり、無理な話ではないだろうと思っていたそうですが、
「プロジェクトから抜いたのは、その為に抜いた訳ではない。会社の考え方もあるんや。」と、
今まで見たこともないような深刻な表情で言われてしまい、申し出を自ら取り下げることにしたといいます。その後、会社を退職し専業主夫に。
 「ちょうど住宅ローンを組んだところだったので、専業主夫になるには金銭的な不安がありました。でも家族はお金のことよりも先のことを考えてくれたので、救われました」と、藤井さん自身が「こうしなきゃいけない」という固定概念に縛られていたことに気づいたといいます。


小学校の頃から「性別」の枠に違和感を持ち、その経験から教育を志す。大人になってから自身の性別への違和感と向き合うことを決め、性別移行を開始。現在は学校を中心に性の多様性について講演・研修活動を行う。
<筌場彩葵さん>性と生の多様性体感プロジェクトファシリテーター/認定NPO法人D×P広報インターン(写真をクリックするとプロフィールが表示されます)

 筌場さんは、小学生のころから「男女」で分けられることへの違和感を抱えていたそうです。大学生までは「男性」として生活をしますが、ある経験がきっかけで「女性」になりたいという願望に気づきます。それは職場の同僚が連れて来た赤ちゃんと触れ合う機会があったときのこと。筌場さんが抱っこしたときに泣いていた赤ちゃんが、他の女性が抱くと泣き止みました。それを見ていた赤ちゃんのお母さんが「やっぱり女の人がいいんだね」と言ったそう。
 そのときは、「のけ者にされたようで、とてもショックでした。性別なんて関係なくいたいけど、どちらかというと『女性』として扱われたいと感じました」と筌場さん。

 その後、少しずつ見た目を女性に変えていきましたが、次は「女性らしくないといけない」という思いに囚われたそう。「まわりからどう見られているのか不安でした。まわりから違和感を持たれずに過ごすことを、業界用語では『パスする』と言うんですよ」と説明します。しかし、女性の中でも、ボーイッシュな人もいれば可愛らしい物が好きな人もいて、グラデーションがあることに気づいていったそう。
 ですが、やはり自身が周りの人に戸惑いを与える存在だと感じているといいます。


今回の会場は女性センタートレピエの視聴覚室でした


 藤井さんは主夫時代に、昼間開催されているイベントに参加すると、まわりのママたちに驚かれたといいます。専業主夫だと名乗ると「育児や家事を頑張ってえらいですね」と声をかけられたそう。「他のママと同じことをしているだけなのに、『えらいね、すごいね』と褒められました。妻は『外で稼いできてえらいね』と言われていたといいます」と自分だけ褒められることに違和感を感じていたと話します。
 すると筌場さんから、「褒めるというテイで、マウンティングされることもありますよね。」との声が。筌場さんは周りの女性から「化粧もちゃんとして可愛い服を着て、私よりも女子力高い~!」と、褒められているようでマウンティングされていると感じることがあるそう。
 2人の発言を受けて、参加者からは「わざと意地悪を言うことはないけれど、「褒める」というアクションは深く考えずに、ついついやってしまいがちかも」という声が。何気なく発した言葉が誰かを傷つけている場合もあるのだとハッとさせられます。


みんなで「もやもや」を話してみよう

 その後は、参加者みんなで日頃感じているもやもやを共有した後、テーマに分かれてのお題トーク。登壇者の3人からもそれぞれ面白いテーマが出されました。全部で7つありました。
・ 異質な他者と出会ったとき(筌場さんからのテーマ)
・ 居心地の良い家庭を築くにはどうしたらいい?(藤井さんからのテーマ)
・ 役(自分との性による)とのつきあい方(ソニョンさんからのテーマ)
・ 子どもが感じる「らしさ」の呪い(参加者からのテーマ)
・ 炎上メディアについて(参加者からのテーマ)
・ 俺がパフェ頼んどるねん!!/女だからって勝手にごはん(小)にするな!!(事務局からのテーマ)
・ 女同士・男同士のあのイヤーな感じって何?(事務局からのテーマ)


笑い声が起きたり、「あー!」と共感の声が上がったりと大盛り上がりでした


 「居心地のよい家庭を築くには」のチームでは、「家事を協力する」といった主体性のない言葉が嫌だという意見や「家族サービス」という家族で一緒に過ごすことを「サービス」と捉えることへの違和感があるという意見が。「結局は相手のことを思いやって過ごせるかが大切。休みの日に相手の好きなものを一緒にやってみるなどすることが重要ですね」と話していました。


 「俺がパフェ頼んどるねん!」のチームに入った男性からは「一人で新幹線に乗っているときに車内販売でポッキーを買えない」や「『君に届け』というキュンキュンする少女マンガが好きだけど、レジに持っていくのが恥ずかしいので発売日の近い少年マンガに挟んで買っている」などの人目を気にする意見が。女性からは「牛丼チェーンに行く時は、初めて来たかのようにシステムが分からないフリをする」などのエピソードも飛び出しました。


 3時間に渡るオープンキャンパスは大盛況に終わり、コーディネーターの藤本遼からは「マイノリティでいるからこそ、人に優しくできるのかもしれません。筌場さんからも出ていましたが、周りを気にせず何でも話せる場が大切。これからも続けていきたいですね」としめくくりました。

 みんなの尼崎大学では、今後もゆるゼミのような形で継続的に開催していきたいと考えています。次回は、尼崎市在住の落語家・尼僧の露の団姫さんが9月29日に上梓された『女らしくなく、男らしくなく、自分らしく生きる』のトークイベントを予定しています。12月4日(水)19時~武庫之荘にあるハワイアンスタイルカフェパイナワーフにお越し下さい。


この記事を書いた人

みんなの尼崎大学事務局

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