ごきげんさんに暮らすまち、尼ノ國

築城奉行日記

「尼崎にお城ができるらしい」。近頃そんな噂をあちこちで聞きます。その真相を探ろうと、尼崎市役所へ問い合わせしてみると「中央図書館の前で待つべし」となにやら厳しそうな返事。緊張しながら、尼ノ物書キ組の若狭が訪ねてみました。現場に行くと着物姿の男が一人。「おーい、こっちでござるよ」とちょっとタイムスリップしてきたような感じの人がいます。


工事現場にそぐわない着物で待ち受ける市役所職員

係長ご乱心。奉行を名乗る役作り


どことなく嬉しそうな馬場係長、ではなく築城奉行馬場之介さん

差し出された名刺には「尼崎市城内まちづくり推進課係長、馬場(うまば)章吾」とあるものの、「拙者は尼崎築城奉行、馬場之介(うまばのすけ)で候。この度の取材はかたじけない」と語りだす係長。なるほど、そういうキャラ設定でいくんですね。わかりました。

 で、馬場之介さん、ここにお城が建つんですか? 「その通り。江戸時代にはここに尼崎城の西三ノ丸があったでござるよ。明治の廃城令で姿を消して以来、多くの尼ノ民がその再建を願っておったのでござる。そんななかミドリ電化(現エディオン)の創業者、安保詮(あぼあきら)殿が平成27年に天守閣の寄贈に名乗りを上げてくれたでござる」。

いざ工事現場へ。でござる。


一級建築士でもある佐々木工事長は現場の最高責任者。とってもやさしそう

 「ござる」連発の不自然な口調はさておき、経緯はよく分かりました。では、現在工事がすすむ建物自体が安保さんからの寄贈ということなんですね。今はどんな工事をしているのでしょうか。続いては工事現場を案内いただきましょう。
 お話を聞かせてくださったのは、尼崎城の普請を取り仕切る責任者、松井建設の佐々木光好工事長です。


完成のイメージ図をもとに解説を受ける馬場之介さん

 「現在、杭打ちの工事の終盤です。今回の尼崎城の支持地盤は海に近いということもあり、地下45メートル付近まで穴を掘りコンクリート製の杭を打込み尼崎城の土台としております」という佐々木さん。なんと松井建設は創業430年。1586年(天正14年)、豊臣秀吉の時代から加賀前田藩の築城を行っていた老舗建設会社です。お城の建設にかかわるのははじめてという佐々木工事長。「弊社でも築城の実績はありますが、お城によって形や構造が違うので、色々と調べながら工事をすすめています。難しい工事なので、スタッフは日頃宮大工を指揮統率しているものや大型案件の経験者など、精鋭をそろえてのぞんでいます。光栄ですが、皆身の引き締まる思いで取り組んでおります」とヘルメットのあごひもを引き締めます。


築城の夢を語っておられます

 ちょうどこの写真の向きで4重天守と2重付櫓が立つ予定で、平成30年中の完成を目指して急ピッチで工事がすすんでいます。馬場之介さん、せっかくなんで姫路城のように建設現場の見学ツアーとかしましょうよ。「いや、身共にも色々と事情があるので、そのあたりは工事長とも今後話し合っていきたいでござる」。

 工事現場を一望できる図書館のデッキから、馬場之介さんに全体像を解説いただきました。「今駐車場になっているあたりは十三間掛ける二十七間(25メートル×50メートル)の芝生広場ができて、子どもたちが気軽に遊びに訪れる公園になるといいでござるな」と築城奉行は完成後の姿に思いをはせるのでした。

お城のこと、奉行のこと。専門家にも聞いてみた。


着物姿に苦笑いしながらも答えてくれた、中村光夫さん(右)と河野未央さん(写真中央)

 ところで、お奉行様。さっきから着物を着て、築城奉行なんて名乗っていますが、ちょっとキャラ設定が甘いと思うんですよね。ちょっと専門家に話を聞きに行ってみましょうよ。と、尼崎市立地域研究史料館を一緒に訪ねました。


お城バッチやステッカーなどをおもむろに取り出し自慢

 江戸時代が専門という河野さんによると「築城奉行」というのは本当にあった役職だそうです。「1618年にはじまった築城の際にも、現場の総責任者として4人の奉行がいました。幕府から派遣されたプロフェッショナルで、設計から施工、財政、人の確保などを手がけていました」という中村さん。
 「それに築城はとても重要な仕事とされて、尼崎藩でもその担当者はのちに家老に重用されました。尼崎市で言えば副市長クラスですね」と河野さんが付け加えると、入庁10年目、今は係長の馬場之介さんも、もしかして将来は…と心おどらせます。それくらい今の尼崎市においても重責を背負った馬場之介さんが、築城への意気込みを語り始めました。


荻原一青作「摂津尼崎琴浦城図」のクリアファイル

 「このクリアファイルは、市内の小学校への出張講座を受けた児童に配る新製品。尼崎出身の城郭画家、荻原一青先生の作品を拝借して作った自信作でござる」と子どもたちがお城を知るきっかけ作りに奔走しておられるようです。
「2年前に奉行に任命されてからというもの、尼ノ民の熱い思いがびしびしと伝わってきておる。一口城主や一枚瓦といった寄付も募集以来、多く寄せられ、市外からの問い合わせも少なくはない」と馬場之介さん。お城ができるまでの過程にも尼ノ民にかかわってもらいたい、という思いを「尼崎城プロジェクトサポーター」の募集とともに語ってくれました。

馬場之介日記はじめます。


寄付は続々集まっている様子。詳しくは市役所サイト

 すると河野さん。「江戸時代の築城には多くの人手が求められました。例えば五合橋は、建設工事の報酬として米5合が支給されたことがその名の由来とされています。尼崎城の築城工事にも民衆が多くかかわったと思われます」と解説。「なるほど、江戸時代のように尼ノ民も築城に参加できる仕掛けが大切ということでござるな」と馬場ノ介さんは、いくつかの妙案が浮かんだようです。こんな風に尼ノ民が参加できるイベントやキャンペーンがこれから続々登場する予定。尼崎城の今後の動きや最新情報は、「築城奉行馬場之介日記」として当サイトで連載します。馬場之介さんのレポートとこれからの役作りをどうぞお楽しみに。

市役所サイト


鏡の前で安全確認をおこたらない馬場之介さん










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