ごきげんさんに暮らすまち、尼ノ國

尼ノ民たち

安保知実さん(23)/「natural marche HareBare」スタッフ

尼崎から全国の農家とつながって


 尼崎で60年以上も前から有機農業のための技術や肥料、資材を研究・開発している会社があります。1952(昭和27)年創業の「大和肥料」です。「心豊かな社会づくり」をめざして、農業を通して食や環境をよりよくしていこうと、全国各地の農家とつながって奮闘しています。

 「子どもの頃、農家さんの畑にうかがって、イチゴ狩りをしたりホタルを見たりバーベキューをしたりしていたことを思い出します」と話すのは、現社長の娘であり、社員の安保知実さん。


 生まれも育ちも尼崎ながら、子どもの頃から田んぼや畑、農業を身近に感じて育ってきたことが、今の仕事の土台にあります。

価値観を伝える場として


 安保さんは現在、農家の人たちとその野菜を食べる人たちをつなぐ「natural marche HareBare(ハレバレ)」を担当しています。つながりのある農家から届く無農薬・自然栽培の野菜を中心に、その野菜をおいしくいただくための調味料や肉、魚、卵、米、加工品まで幅広くそろえるオーガニックショップです。

 現社長が「土づくりからこだわった野菜はおいしい。みんなにも食べてほしい」と2009年に、会社の敷地内にオープンしました。


 「農家さんに『どうして有機農業をしているのですか?』とたずねると、『第1は自分の健康のため、第2は食べてくれる人たちの健康のため』と。さらには『自分たちがみんなの健康を守っていかないといけない』と信念を持ってつくっているのが伝わってきました。たとえば、一般的に行なわれている慣行農法の場合、ハウスなどの狭い空間でも農薬を使うので、農家さん自身が影響を受けてしまいます。見た目がきれいな野菜でないと売れない現状では使わざるをえません。私たちは、虫食いがあったとしても、農薬や化学肥料に頼らず、大地を思いながら手間ひまかけてつくられたお野菜を大事にしたいし、農家さんを応援したい。その価値を広めていきたいと思っているんです」

 そんな想いを胸に、安保さんはお店に立っています。

つくる人と食べる人の懸け橋に


 安保さんは2014年に入社して以来、さまざまなことに取り組んできました。

 まずはつくる人と食べる人が直接会って話せる機会をつくろうと「オーガニックフェスタ」を開催。ファーマーズマーケットを中心に、誰もが気軽に集えるイベントやライブも実施しました。お客さんからは「いつも食べているトマト農家さんに会えてよかった」、農家の人たちからは「つくった野菜を食べてくれている人たちの顔を見られて励みになった」と反応があったと言います。

 2017年には、元社員寮だった現在の場所に移転して「おしゃれな八百屋さん」に改装、営業日も週5日に拡大しました。販売するだけではなく、人と人がつながる場にしたいとカフェとイベントスペースを併設。仕入れに訪れた農家の人たちとお客さんが会話したり、「子育て中」「アレルギー」などで食に関心のある人たちからさまざまな声を聞くことができたり、多様なコミュニケーションが生まれることで、次の展開につながっています。


 「スーパーで販売しているお野菜よりも高いので、値段を見ただけで『高い』と帰られる方もいます。どうして『高い』のか。お野菜を見ただけではわからない、農家さんの想い、野菜づくりのプロセスを伝えたい。おいしさをわかってもらえるように試食コーナーを設けたほか、今後は農家さんによるお話会を企画したり、農家さんを紹介する記事を作成して発信したりできたらいいなあと考えています」

自分から関わると変わる


 「『オーガニックフェスタ』の第1回目を開催する時、塚口のコミュニティースペース『amare(あまり)』でイベントをどう企画しているのかについての集まりがあったので参加したら、『尼崎にこんなに面白い人たちがいたんだ!』という出会いがいっぱいありました。『尼崎ぱーちー』というイベントの実行委員になると、出会った人たちとの関係性が深まって、ますます面白いつながりになっていったんです。ただ暮らしているだけでは気付けなかったこと。自分から知りたい、関わりたいと行動を起こすことが大事なんだと思いました」

 尼崎での出会いが、お店づくりのヒントや人生における気付きにもなっているそうです。さまざまな人たちとつながりながら、有機野菜をはじめ、「信念を持ってつくられたもの」に価値を見出し、共有し続けています。











(プロフィール)

あぼ・ともみ 子どもの頃から「大和肥料」で働くイメージを抱く。「関西外国語大学短期大学部」に進学したのは、同社社員が通訳する姿に憧れたから。しかし、フォークソング部に所属すると、バンド活動が忙しくて「語学はまったく」。現在は店頭に立つほか、野菜や食材の仕入れ、市内の飲食店に野菜宅配、イベント企画・実施、出店などを担当。夢は「ハレバレ農園をつくって、みんなでお野菜づくりをすること」。


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