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尼ノ民たち

店の前に立つ吉井さん
吉井佳子さん(40)/アリクイ食堂店主

多世代が集うアリクイ食堂


 2012年にオープンした「アリクイ食堂」は、栄養バランスの良い定食や手づくりのお惣菜が食べられる食堂。ご飯はおかわり自由であることから、多いときは6升ものお米がなくなります。店内に所狭しと貼られたカラフルなポップからは、何やら楽しげな雰囲気が漂っています。


 アリクイ食堂には、気さくな吉井さんの人柄に惹かれ、子ども連れのママからサラリーマン、学生、酒盛りをするおじいちゃんグループまで様々な世代が集います。なかには、昼と夜と1日に2度も訪れる常連さんも。お客さん同士で話が盛り上がって、「競馬部」やアイドルを応援する「AAA(トリプルエー)部」などの部活動にまで発展したり、吉井さんが間を取り持ち常連同士で結婚したカップルがいたりと、食堂の枠には留まりません。さらに吉井さん自身も、3年前にアリクイ食堂に通う常連さんと結婚したというから驚きです。

逆境を救ってくれた塚口の商店主


 吉井さんは13年前に、塚口駅南側に「shot bar antbear(アントベア)」というバーをオープン。7年ほどして、次なる店舗をとアリクイ食堂を始めることに。しかし開店直前に、調理スタッフが突然辞めてしまい、吉井さんが一人で厨房に立つといった状況になったのです。

 「当時は自分がお金をもらって料理をするなんて考えられませんでした。でもやるしかなくて。本当に暗黒時代でした」と思い出して目に涙を浮かべます。そんな吉井さんを支えてくれたのは、塚口の商店主たちでした。「落ち込んでいると、塚口の店主が集まってきてくれて。和食店の店主には、出汁の取り方にはじまり、お米の研ぎ方まで教わりました。愛されて長く続いている店が多いので、良い人ばっかりなんです」と振り返ります。

単身もファミリーも楽しめる塚口



 アリクイ食堂のある塚口商店街では、イベントが頻繁に開催されます。毎月第3土曜日にお昼から料理やお酒を楽しめる「ひるのみ」や、地域の神社の祭りに合わせて開かれる「縁日」、夏には子ども向けの屋台が集まる「キッズ夏祭り」など、年間を通してイベントが開催されています。

 「塚口は新しいビルやマンションとおしゃれな雰囲気がありつつ、下町的なところが消えていない。今、そんなレトロなことが求められているのかな」と話す吉井さん。そんな塚口の雰囲気に惹かれ、夕方以降の商店街で飲み歩きをするサラリーマンが多く、休日の子ども向けイベントでは、たくさんの親子連れで盛り上がります。


塚口商店街
塚口商店街には軒先に赤提灯がかかる飲食店が連なります

 「これからやりたいこと?とにかく休みたいというのが本音」と言うほど、お店を開けて料理し続けている吉井さん。「お店を続けられることが幸せ。以前働いていたスタッフや常連さんが結婚や出産報告をしに来てくれるので、みんなが帰って来られるお店を続けていきたい」と話します。一緒に笑って泣いて、胃袋も心も満たしてくれるアリクイ食堂。「また帰ってきたい」と思わせる雰囲気は、まるで塚口の「実家」とでも呼びたくなる場所なのです。











(プロフィール)

よしい・よしこ ライター、バー店主を経てアリクイ食堂店主に。家では朝6時に夫に起こされ朝食をつくり、お店で昼と夜の定食をつくり、日付が変わるころに帰宅。「一日中ずっとご飯つくってます」と苦笑いをする。


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取材・文 尼ノ物書キ組

立花莉絵子

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