学生生活

 10月23日(金)にオンラインゼミ「酒をやめる〜依存症回復のためにみんなでできること~」を開催しました。
 コロナ禍でより身近な問題となっている「依存症」について学ぶ3回シリーズの最終回で、シリーズの途中からは口コミで当事者の方も参加されるようになり、今回は30人以上で学び合うオンラインならではの場となりました。

コロナと依存症シリーズ①「やめられないをかんがえる〜コロナと依存症〜」

コロナと依存症シリーズ②「酒とコロナ〜やめられないをかんがえる~」

アルコール依存症 回復からの語りを聞く

 まずは、アルコール依存症からの回復の道筋の一つとして、当事者の自助グループ「断酒会」について紹介してもらいました。

断酒会ってどんなところ?


最初は断酒会なんて入ってたまるかと思っていたと話す勝浦勝さん

 尼崎市断酒会が毎週開いているという「はなみずき支部例会」の動画を見てから、兵庫県断酒連合会会長の勝浦勝さんから断酒会についての説明をしてもらいました。
 「断酒会」とはお酒をやめたいと思っている人が集う自助グループのこと。当事者やその家族が参加して、それぞれの体験談を語ります。参加者は体験談について感想などは述べず、そこでの話はその場に置いて帰るという「言いっぱなし、聞きっぱなし」がルールなのだとか。
自助グループの運営はすべて当事者で行われ、明るく闊達に語る勝浦さんも、かつてお酒がやめられなくて苦しんでいた当事者であるとのこと。

 「お酒の飲み方がおかしくなったきっかけや、周りの人に迷惑をかけたこと、それが原因で体を壊したり人間関係が壊れたことなど、自身のこれまでについて話します」と勝浦さん。
 世間では理解されにくい経験を、当事者が集まる断酒会で話すことで改めて自分を見つめる機会になると同時に、「苦しい状況にあって立ち直ろうとしているのは自分ひとりじゃない」と感じることができるといいます。


断酒会の仕組みが分かりやすくまとめられた資料

 上図の左側「若い頃の考え方」には、断酒会参加前の視野が狭くなった様子が書かれています。しかし断酒会に参加し、少しずつ役割を担い社会復帰の練習をすることで、数年後には周囲の人の声を受け入れられるようになるそう。自分中心だった考え方が、周囲の人の気持ちをかんがえたり、「おかげさま」と感謝の気持ちが芽生えてくるといいます。
 「0か100と極端な物の捉え方しかできなかった思考が、少しずつ60、70%で考えられるようになっていきます。断酒会で毒を吐くことで、自己肯定感が高まっていきます」と、繰り返し参加することで価値観が変化すると勝浦さんは話します。

いよいよ本人体験談を聞いてみる

 今回は断酒会さながら、当事者から体験談をお聞きする時間を設けました。「言いっぱなし、聞きっぱなし」のルールですが、本人に許可を得て少しだけご紹介します。

 語ってくれたのは、生まれつき肝臓に難病を抱えていた中田秀人さんです。

 「小さいころから手術を繰り返し、学校のイベントごとも参加できず、ずっと我慢の日々を過ごしていました。今ほど世の中の理解もなかったと思います。
 半年以上ICUに入って奇跡的に手術が成功したとき、「もう我慢しない!」と心に決めました。アルバイトを始めた先の飲食店で、バイト仲間たちとお酒を飲むようになりました。すぐにお酒のとりこになり、飲み方がどんどんエスカレートしていき、500mlのビールを50本飲むことも。もう牢屋に入れてもらった方が楽だと自分で110番したこともあります。

 アルコール依存症の専門病院では持病を理由に受け入れを断られ、途方に暮れていたときに、依存症を抱える人の回復支援を行っている「リカバリハウスいちご尼崎」を知り通い始めました。

 すぐにお酒がやめられたわけではありません。いちご尼崎に通って一年近くしたころ、一緒に作業している仲間に誘われたのをきっかけに、断酒会に入会することになったんです。生きる希望を失い、お酒をやめるなんて絶対できないと思っていた自分が、どうして行こうと思ったのか今でも信じられません。
 それからは、断酒会に参加しお酒をやめる努力をしています。今では週1回の姪っ子、甥っ子との時間が生きがいです」

 中田さんは、自分にとってお酒とは「自分が楽になるための「薬」。正気を保つための「薬」」だったと話します。「生まれたときから自分には他の人とは違うハンデがあると感じていて、お酒を飲まないと人とも話せなかったです。」

 断酒会に参加するまでは、周囲の人に迷惑をかけていることに考えが及ばず、家族からの心配もプレッシャーに感じていたそう。「どうせやめられない」と自分にあきらめ、現実を考えれば考えるほど飲んでしまったといいます。
 しかし、いちご尼崎の仲間や断酒会のメンバーなど「人との出会い」がお酒をやめるきっかけになったと中田さんは話してくれました。

私たちもアルコールを語ろう


左上が若狭さん、右上が大川さん、下中央が景山さん

 お二人の話を聞いて、第1回のゼミから皆勤で参加している大川さんと景山さんとみんなの尼崎大学スタッフの若狭さんで、このゼミを経て思うことを共有することに。他の参加者もzoomのチャット機能を使って参加します。

 若狭さんが「アルコール依存症は“あっち側の世界”だと思っていたけれど、実は地続きだと感じましたね」と話します。一方景山さんは、「アルコール依存症の知人がいたので、逆に“こっち側の世界”のイメージでした。中田さんの話を聞いて、断酒会が有効な場と思ったし、また、苦しいときに頼るものとしてお酒以外の代替手段があればよいなと思いました。」
 大川さんは「最初当事者の方は断酒会への参加に抵抗がある中で、リカバリハウスいちごのような同じ立場の人が一緒に作業をする場所が、ステップになっていると分かりました。黙っていても居られる場所って大切ですね。」

 断酒会について研究をしている参加者からは「体験談には苦しい過去やプライベートが含まれるので、外に出ないように安全性を担保することが大切。言いっぱなし、聞きっぱなしは全国共通のルールですね」と教えてくれました。
 「言いっぱなし、聞きっぱなしの場というのは、実は日常生活の中でもあまりないかも。あらゆるコミュニティでヒントになりそうですね」と若狭さん。


ゼミ終了後は放課後タイムとして、居残りした参加者で感想を共有しました

 参加者からは「家族の回復が本人の回復につながることもあるので、次はもっと家族の話を取り上げてほしい」や「この3回のゼミで、一番印象に残ったことは居場所作りです。居場所について今一度考えるきっかけになった」などの感想が。
 実は今回も、当事者の家族の方の体験談を予定していたのですが、オンラインの場で語れるゲストの調整がつかなかったところ、参加者の中で家族との体験談を共有してくれたり、次回があれば自分が話したいと手を挙げてくれる方がいたり、場を開くことで双方向のコミュニケーションが生まれ、準備していたプログラム以上の体験をすることができました。

依存症回復のためにみんなでできること

 「自分が生き延びるための「薬」としてお酒を使っていた」と話してくれた中田さん。「同じ状況だったら自分もどうなっていたか分からない。そのときにお酒以外の選択肢がある社会であってほしい」とチャットに書いてくれた参加者がいました。
 最後に、この企画をみんなの尼崎大学に提案してくれた、尼崎市こども青少年課の内田さんから「依存症については、問題が表面化したときに専門職がケアするというのでは充分ではなく、もっと日常的なコミュニティのあり方や関係性の方が大切なんです。この3回のゼミは貴重な体験だった。このような場を続けていきたい」とコメントが。
 今まで当事者や家族、支援者の方で話し合っていた問題を、少しずつ一般の人に開いていって、コミュニティ全体のテーマとして考えられるきっかけになったのでしょうか。

 参加者以外からも「あれ、実は気になってるねん」と反響が多かった「コロナと依存症」シリーズ。今後も、内田さんやリカバリハウスいちご尼崎の武輪さんを中心に、形を変えながら続いていく予定です。
 続報はみんなの尼崎大学のフェイスブックなどで発信しますので、興味のある方は参加してみてくださいね。

■もっと知りたいという方は全編をyoutubeでどうぞ



この記事を書いた人

みんなの尼崎大学事務局

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