オープンキャンパス

 クラスにうまく馴染めなかったり、核家族や共働きの家庭が増えたことで子どもだけで過ごす時間が長くなったりと、子どもたちは多くの悩みを抱えています。
 今回のオープンキャンパスは、そんな子どもたちのための居場所をつくろうと活動している大人たちを迎えて開催しました。
 会場は、2018年4月に上坂部にできた子どものための拠点「TUMUGUBA(ツムグバ)」。進行は、そのTUMUGUBAを運営するNPO法人Co.to.hana(コトハナ)の藤野宏美さんと、みんなの尼崎大学事務局の藤本遼です。


JR塚口駅に近い、閑静な住宅街にあるTUMUGUBA。

「TUMUGUBA」はこうして生まれた

 まずは藤野さんからTUMUGUBAの紹介です。「デザインで社会を変える」というビジョンを掲げさまざまなプロジェクトを手掛けるNPO法人Co.to.hanaさん。児童虐待やネグレクトなど、子どもをめぐる社会課題が多いことに着目し、“場所づくり”に取り組むことにしたそうです。
 しかし、子どもをめぐる施策の多くが担当部署や専門分野という大人の事情で分断されている、いわゆるタテ割り状態。子どもにとって快適であるように、横断的に取り組むことに意義があると考え、「先生と親、クラスメイト以外の人とつながる場」というコンセプトが生まれました。


進行役のお二人。いちばん右が藤野さんで、その隣が藤本です

 NPO法人Co.to.hanaの本拠地は大阪の住之江区ですが、活動拠点に尼崎を選んだ理由は何だったのでしょうか?
 「尼崎では行政と事業所、そして市民団体がそれぞれ得意分野を活かして活動していたことです。とりわけ上坂部は、地域のつながりが濃かったことが決め手でした」と藤野さん。場所の決定には、本日の登壇者のひとり、ポノポノプレイスの吹野加代さんからの紹介が大きな力になりました。

 物件はもともとデイサービスで使われていた施設。約70㎡の大きな部屋は小屋組みが見える魅力的な空間だったので、良い部分はそのまま生かし、改修箇所を絞ってリノベーションすることに。「手を入れたのは照明と床の張り替えだけで、冷蔵庫をはじめとした什器はご近所から譲り受けたんですよ」と、こんなところにも地域との繋がりが伺えます。
 工事費の半分はNPO法人が自己負担し、半分を助成金でまかない、2018年4月に「TUMUGUBA」がオープンしました。場所の運営は、パートナー企業・団体からの協賛金と時間貸しで設定した施設の利用料金でまかなっています。

 では、その利用方法とはどのようなものなのでしょうか。3人の登壇者の話を聞いてみましょう。


小屋組みが映える、大きな空間が特徴です。

安心して学べる場をつくる

 最初にご報告いただいたのは、NPO法人あっとすくーるの柳田良平さん。箕面、高槻、吹田などで少人数制の塾を運営されています。活動の発端は「塾に通うお金がない」「自分には勉強なんて無理」「進学という選択肢を知らない」など、それぞれの事情を抱えた子どもたちに安心して学べる場を提供すること。TUMUGUBAでは週1回開講し、地域の中高生が利用しています。


柳田さんは、大学時代にボランティアとして関わったのをきっかけに「あっとすくーる」のスタッフになったそう

 その活動は、塾という場にとどまりません。「保護者の代わりに学校行事に参加したり、勉強以外の話もして、子どもが進路相談しやすい雰囲気をつくっています」といいます。

子どもの居場所をつくる

 次のお話は、一般社団法人ポノポノプレイスの吹野加代さん。吹野さんは元尼崎市公立保育所の保育士で、その経験をもとに子育て支援をしようと4年前の2015年に活動をスタート。TUMUGUBAのすぐ隣で「ちびっこステーションひだまり」を運営し、乳幼児の一時預かりから育児相談、放課後の学童に至るまで幅広く手掛けています。


大きな身振り手振りで話す吹野さんは、みんなのお母さん的存在。

 TUMUGUBAでは、キッチンを利用して子ども食堂を開催。土曜の昼に「放課後カフェ キッチンポノポノ」を、水曜の晩に「サンセットカフェ」をそれぞれ月2回ずつ、計4回実施しています。
 「昼の食堂は11時からなんですけど、子どもたちは朝の9時ぐらいからこのあたりをウロウロしています。親が両方とも働いているでしょう?ああ、この子たちは居場所がないんだなと実感します」と感情たっぷりに話す吹野さんです。


豊富な経験からの語りに、たびたび会場は笑いに包まれました。

 中高生の居場所づくりとして開くパティシエとのお菓子づくりは人気企画。でも、楽しそうに参加した子どもたちが別れ際に「あんな(あのね)」と声をかけてきたら、それは話を聞いてほしいという合図。「私たちからその話題には踏み込まない」というところに、子ども本位の姿勢が現れています。

講座参加で得たスキルを地域へ

 最後のお話は、三浦尚也さんから。先のお二人はこの場所で定期的に事業をしていますが、三浦さんはちょっと違って、「TUMUGUBA地域ライター養成講座」に参加したという立場からのお話。地域の人が地域のことを地域の人に発信するというコンセプトのこの講座。課題の一環で上坂部周辺を歩くことで、取材のノウハウが身につき、「地域のことを取材して、もっと腕を磨きたいと考えるようになりました」といいます。
 訪問リハビリやマッサージを仕事にしている三浦さん。「講座に参加してからは、仕事についてのブログを楽しく書けるようになったうえ、お客さんと話すときの言葉の選び方にも変化が出てきました」と、効果を実感しているそうです。そんな三浦さんは、文章を書くスキルを地域課題の解決に役立つことに使おうと、「尼崎KAWARABAN計画」を構想中。この場所で得られた特技がこの場所に来る子どもたちのために生きるのかもしれません。


ブログでは、2,000字くらいの記事を書くようになったという三浦さん。

 後半は、それぞれのお話をさらに掘り下げるため、登壇された団体とみんなの尼崎大学事務局からテーマを出し、5つのグループでディスカッションをおこないました。


好きなグループを選んで、20分×2回のトークセッション。

A.高校卒業後の進路(柳田さん)

 「最近の高校生は、進路の選択肢が少ないのではないか」という柳田さんからの問いかけについてディスカッション。大工さんや飲食店の出前など、以前は家の周りで見られた仕事を見る機会が減っているという指摘や、紆余曲折を経験する時間的、精神的余裕がないという指摘がありました。信頼できる大人に出会う機会を見つけることが近道ではないかという意見も。


話した内容は、模造紙に書いて記録しました。

B.「ふらっとカフェ」へのアイデア(吹野さん)

 無料で使える施設は、利用者にとって敷居が高くなってしまうことがあるという経験から、交流を中心に据えた飲食店づくりに取り組むという吹野さんからのお題。安心して歩き回れるように畳敷きにしたり、一人でも大人数でも使えるように座席の配置を工夫してはどうかという意見が出ました。

C.ライター講座の広報と今後のこと(三浦さん)

 三浦さんはライター講座の今後の展開についての意見を募集。いまは情報があふれている時代ゆえに、存在感を発揮するためにもブログや情報発信だけにとどまらず、そのあとの行動につながればというエールが贈られました。


議論に集中するお母さんに代わって参加者が赤ちゃんを抱くのも、尼崎大学ならではの光景です。

D.みんなの尼崎大学へのアイデア(みんなの尼崎大学事務局 立石)

 毎回異なる会場で開催している「みんなの尼崎大学オープンキャンパス」。そろそろ行き先がなくなってきたのではないかと事務局は心配しています。訪ねる候補先としては、尼崎センタープール(ボートレース場)、園田競馬場、市長室、総合体育館などが挙がりました。また人物として、尼崎にゆかりがあるという小泉八雲のひ孫や、助産師、外国人と話してみたいという意見が出ました。

E.TUMUGUBAへのアイデア(藤野さん)

 会場であるTUMUGUBAを使いこなすアイデアでは、進路相談、写真講座などのプログラムに加え、中高生が趣味やテーマで集まる機会があってもよいのではないかという意見が。TikTokをはじめとする動画やSNSなど、気になるキーワードを掲げたら、学校やクラスの垣根も越えて来てもらえそうですね。

 こうして、密度の濃い2時間半があっという間に過ぎました。進行役の藤本からの提案で、遠方からの参加者に感想を聞くと、「限られたエリアに同じ思いを持った人が集まっていることがすごい」「場所があったから人のつながりができたと思う」「尼崎というまちの結びつきの強さを感じた」というコメントをいただきました。本日ゲストの柳田さんは「日々感じていることを話して、アウトプットする機会をいただけてよかった」と話していました。
 また、今日初めてTUMUGUBAに来たという参加者も多く、子どもたちのために活動したり関心がある大人たちが集まり、新たにつながる機会となりました。


総勢40名が参加。たいへんにぎやかな会になりました。

募集案内(イベントは終了しました)

2018年4月に生まれた、子どものための地域拠点「TUMUGUBA(ツムグバ)」。子どもの学びと育ちを応援する場として利用されるとともに、地域ライター養成講座等も行っています。TUMUGUBAで活動するグループの話を聞いて、地域の子どもたちの「今」を知り、どんな「未来」が描けるのかをみんなで考えます。

■日時
2019年1月19日(土曜日)午後3時00分~午後5時30分(30分前より受付開始)

■場所
TUMUGUBA
(尼崎市上坂部3-21-2) JR塚口駅から徒歩5分

■テーマ
「こどももおとなも集まる場」

■参加費
無料

■持ち物
筆記用具

■定員
30名程度

■申込・問い合わせ
尼崎市役所 尼崎大学・学びと育ち研究担当
電話:06-4950-0387 ファクス:06-4950-0173
メール:ama-ucma@city.amagasaki.hyogo.jp


この記事を書いた人

みんなの尼崎大学事務局 綱本 武雄(尼崎城のシャチホコのプラモデルを作っています)

ページトップヘ